駒澤大学陸上競技部から世界へ羽ばたく 必ずできる、もっとできる。
16面記事大八木 弘明 著
再び黄金期築いた監督の教え
今年正月の箱根駅伝を含め、2022年度大学駅伝3冠を達成した駒澤大学陸上競技部の大八木監督による組織・リーダー論である。
著者はエリートコースの人ではない。高校時代は故障に苦しみ、卒業後は働きながら競技を続け、24歳で駒澤大の夜間部に入学して箱根駅伝に出場した。その「回り道」が学生たちへの指導に生きている。
また、指導者としていったん「常勝軍団」をつくりながら、その後、勝てない時期が続き、自身も熱意を失いかけたが、時代に合わせて指導を変えることで再び黄金期を取り戻した過程が非常に興味深い。自分を変える。言うは易いが、なかなかできることではない。
著名なスポーツ関係者の言葉は、子どもたちにも響きやすい。本書でも「準備」や「規則正しい生活」の大切さ、練習に付いていくことが目的になってはいけないなど、学校でもすぐに使えそうな内容も多い。
「経験を、人としての成長につなげなければならない」「大学は学ぶ場であり、本領を発揮するのは社会人になってからでいい」など、教育者らしいまなざしも随所に表れている。
また、選手同士が互いに厳しく注意し合う「当たり前の基準が高いチームにする」といった話は、学校という職場での組織づくりや人材育成にも通じるだろう。読む人の関心によって、さまざまな引き出し方ができる書だと思う。
(1650円 青春出版社)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)