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情動制御の発達心理学

12面記事

書評

上淵 寿・平林 秀美 編著
最新知見基に年代ごとの特徴解説

 本書では、生涯発達的視座から情動制御が、成長とともにどのように発達していくのかをたどり、各年代の発達的特徴や課題を、多様な心理学の研究成果を基に概観する。「情動制御」がアメリカ心理学会で初めて取り上げられたのは2007年で、新しい研究分野ではあるが、近年急速に目覚ましい発展を遂げていると紹介される。
 人間が社会性を獲得し、社会に適応していくために身に付けなければならない能力の一つに「情動制御」が挙げられる。評者がまず注目したのは、第3章「児童期の情動制御」である。児童の情動制御を育む教育として、「社会性と情動の学習」(社会性に関するスキル、態度、価値観を身に付ける学習)の重要さが指摘されている。次に、第4章「青年期の情動制御」では、青年期は情動経験や情動制御の発達にとって最も重要な時期であることが指摘されている。青年期には感情や衝動をつかさどる脳の扁桃体や腹側線条体などの辺縁系の皮質下が発達する一方で、認知的側面や衝動のコントロールに資する前頭皮質の発達が十分でない不均衡状態が生じることを踏まえ、情動制御の能力を育む必要性が指摘されている。本書を読んで、こうした人間の心の発達に関する科学的研究の知見を十分理解し、一人一人の子どもの発達課題を的確に把握し、社会に適応するのに必要な能力を確実に身に付けさせることの大切さを改めて思った。
(3300円 ミネルヴァ書房)
(新藤 久典・文部科学省学校業務改善アドバイザー)

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