エピソードに学ぶ教育心理学
12面記事中谷 素之・中山 留美子・町 岳 著
日常場面を基に子どもの見方磨く
教室では、子どもたちが日々いろいろな思いを抱きながら生活しており、教師は、その子に合った声掛けをしようと努めている。しかし、子どもの状況をどう理解し、どんな指導や支援をしたらよいか、悩むことも少なくない。教育心理学の視点から子どもの発達や心理、学び、集団の育ちなどを捉えれば、適切な対応の仕方に気付くだろう。
本書は、日常の学級で見られがちなエピソード等を基に、教育心理学の理論を学び、子どもの見方や指導の在り方について、教師自身の「考える力」を養おうとする書。例えば、突然よい子ではなくなった子、母親に暴言・暴力を示す子、進路に悩む高校生などの事例をきっかけとして、ピアジェやヴィゴツキーなどの研究者の理論を紹介しながら、思考や認知の発達、情動の発達や社会化などを学んでいく。
さらに、こうした個の育ちを捉える視点とともに、メタ認知、動機づけ、教育評価、協同学習、人間関係づくり、学級風土など、学校生活の中心となる「教室の学び」を支える知見についても解説。教師は教室環境をつくる大きな役割を担っている。
いま学校では、不登校や発達障害、LGBT、外国にルーツを持つ子やヤングケアラーなど、子どもの特性や環境が多様化している。実際の教室風景と理論を往還しながら読み進めていくと、指導の引き出しが増え、実践的な力がつくだろう。
(2090円 有斐閣)
(大澤 正子・元公立小学校校長)