スクールバス・送迎バスの重要性と安全管理の徹底
トレンドスクールバス・送迎バスは、児童・生徒の登下校時や保育所・幼稚園・認定こども園などで導入されています。
スクールバス・送迎バス導入の目的は、登下校時の事故を防ぎ、子どもたちの安全を確保することです。一方で、スクールバス・送迎バス内で起きる事故も少なくありません。
スクールバス・送迎バスを導入している教育機関には、安全確保のための取り組みや安全装置の活用が求められます。
今回は、スクールバス・送迎バスの重要性とともに、2022年10月に内閣府が提示した『こどものバス送迎・安全徹底プラン』について解説します。
スクールバス・送迎バスの運用による安全確保
子どもたちの登下校時、通学路で事件や事故が発生することがあります。通学路における事件・事故の発生から子どもたちを守る安全確保の有効な手段として挙げられるのがスクールバス・送迎バスの活用です。
スクールバス・送迎バス導入の重要性については、内閣府が2006年に発表した『子ども安全・安心加速化プラン』にも記載されています。
このプランのなかでは、地域の路線バスをスクールバス・送迎バスとして活用したり、企業・福祉施設の所有バスを活用したりすることで、スクールバス・送迎バスの導入・運営の促進につなげる旨が記載されています。
出典:内閣府『子ども安全・安心加速化プラン』
スクールバス・送迎バス内の安全確保
通学路の安全性確保のためにスクールバス・送迎バスの導入・運営が促進されるなか、スクールバス・送迎バス内の安全性確保に注力することも無視できません。
実際、保育所や認定こども園で幼児が送迎バス内に置き去りにされ、熱中症で死亡するという痛ましい事故が立て続けに発生しています。このような事故を二度と発生させないために、文部科学省は2022年9月6日、『学校生活におけるバス利用に当たっての児童生徒の安全管理の徹底について』を通知しました。
このなかで、登下校時に利用するスクールバス・送迎バスはもちろん、小学校・中学校の校外学習や、修学旅行で利用する民間事業者のバスを含め、いかなる場合においても、児童・生徒の安全確保が必要である旨が記載されています。
出典:文部科学省『学校生活におけるバス利用に当たっての児童生徒の安全管理の徹底について』
こどものバス送迎・安全徹底プラン
2021年、2022年と送迎バス内で起こった痛ましい事故を受け、内閣府は2022年10月12日、『こどものバス送迎・安全徹底プラン』を発表しました。
このなかで、送迎バスの乗車・降車時に所在確認を確実に行うことのほか、以下3つの緊急対策が示されています。
(1)安全装置の義務付け
(2)安全装置の仕様に関するガイドラインの作成
(3)安全管理マニュアルの作成
出典:内閣府『こどものバス送迎・安全徹底プラン』
(1)所在確認と安全装置の義務付け
誰が送迎バスに乗車するかにかかわらず、乗車・降車時に幼児等の所在確認を確実に行うことと、安全装置の設置を義務付けています。
義務付けの内容
・降車時等に点呼等によって幼児等の所在を確認する
・送迎バスへの安全装置の設置
これら義務付けを違反した場合、業務停止命令等の対象事由になるほか、当該命令違反は罰則の対象事由となります。
出典:内閣府『こどものバス送迎・安全徹底プラン~バス送迎にあたっての安全管理の徹底に関する緊急対策~』
(2)安全装置の仕様に関するガイドラインの作成
国土交通省は、学識経験者等を委員とするワーキンググループを設置し、2022年12月20日『送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のガイドライン』を策定しました。
送迎バスの運用では、意図せずにヒューマンエラーが起こることも考えられます。このガイドラインでは、それを補完することを目的に、幼児等の所在確認が確実に行われるようにするために最低限満たさなければならない要件や、置き去りを防止するための安全装置の技術要件、仕様などがとりまとめられています。
出典:内閣府『こどものバス送迎・安全徹底プラン~バス送迎にあたっての安全管理の徹底に関する緊急対策~』/国土交通省『送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のガイドライン』
(3)安全管理マニュアルの作成
安全管理マニュアルでは、送迎バスの運行にあたり、園の現場に役に立つのはもちろん、簡潔で分かりやすい安全管理の徹底に関するマニュアルが策定されています。
マニュアルで示されているポイント
・毎日使えるチェックシート
・園での業務の流れが適切か確認する内容
・ヒヤリ・ハット事例の共有
・子どもが自らSOSを出せる支援
・ラッピングやスモークガラスの使用などに関する留意事項
このうち、“毎日使えるチェックシート”を印刷すれば、保育所や幼稚園、認定こども園、特別支援学校での所在確認に利用できます。
出典:内閣府『こどものバス送迎・安全徹底プラン~バス送迎にあたっての安全管理の徹底に関する緊急対策~』
スクールバス・送迎バスによる安全確保に求められる安全管理の徹底
スクールバス・送迎バスは、登校時の事故や事件から子どもたちを守る有効な手段の一つです。しかし、ヒューマンエラーによって、スクールバス・送迎バス内で子どもたちが危険にさらされる可能性もゼロではありません。
安全装置の設置や、“毎日使えるチェックシート”を活用した所在確認を確実に行うことなどにより、ヒューマンエラーを補完し、子どもたちが安全にスクールバス・送迎バスを利用できるよう努めることが重要です。