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道徳は本当に教えられるのか 未来から考える道徳教育への12の提言

15面記事

書評

田沼 茂紀 編著
「心の教育」の曖昧さから脱却へ

 半ば諦めてはいたが、こんな学者がやはりいたのだと、うれしく期待感を持ちながら読ませていただいた。なぜなら私がこれまで抱いてきた道徳教育への疑問に対して明解に記述されていたからである。終章の「何のために学ぶのか」の項は、評者が日常発信している内容とほぼ一致していたことに驚いた。
 特に編著者の田沼茂紀氏(國學院大学教授)が、「道徳そのものが人間にとってもつ意味と、それを学校教育の中で道徳教育として施すこととの間には大きな乖離があることを強く感じる」と指摘し、さらに「道徳は教えられるものだけれど、肝心の道徳を教える教師がどこにも見当たらない」とまで本音で書き切っている。ある意味、この種の本で、ここまで忖度なしの小気味よい表現をしたものに私は出合ったことがない。
 極め付きは、「伝統的価値伝達型道徳指導観から未来志向的探求型道徳学習観への転換」「子どもが自分で歩み出す背中を道徳科で押し出す」との、見出しである。表紙には「教え込みや、『心の教育』のあいまいさから脱却し、未来を生きる子どもたちの羅針盤となる新時代の道徳教育」と記す。12人の研究者が再考し赤裸々に現行の道徳に警鐘を鳴らす本気度にあふれた内容だ。
 これまでの読解力的道徳からの脱却が始まろうとしている。
(2200円 東洋館出版社)
(大久保俊輝・麗澤大学教職センター長)

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