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教育学×医学でわかった 親子の「どうしても起きられない」をなくす本

15面記事

書評

木田 哲生・三池 輝久 著
不登校が改善した「みんいく」の手法

 本書は不登校などの原因となる、睡眠習慣を改善するための方法を示した。「みんいく」とは著者の木田氏らの行った睡眠教育の略語で、睡眠習慣に問題を抱える親子の支援活動だ。みんいくは、小児科医の三池氏の心と睡眠に関する研究結果を基に、堺市の中学校で行われた。実践校では、5年間で不登校生徒の割合が半分以下に減少したという。
 その方法はまず、1日ごとに睡眠に関連した目標、行動、状況、総時間、コメントを書き込む「睡眠表」を用いて、子どもの生活全般を把握する。その上で、声掛けを行う際には、子どもが「自分のことを気に掛けている」と感じるように接する。また、中学生以上には親や教員以外の、行動を支える「重要な他者」の存在が必要な場合もあるという。
 本書の構成はPart1で、睡眠タイプ別の対処法を扱い、2では、子どもの安全・安心のための環境の確保などの具体的な方法を紹介する。Part3は、睡眠改善に向けた子どもの気力の充実と、自立を促す関係の構築方法、4は睡眠研究の知見、5は保護者の心構えという内容だ。
 子どもの睡眠に悩む親や教員は、ほとんどが言っても聞かないという状況に陥っているのではないだろうか。そこで本書にある、大人が与える「少しの緊張感」が睡眠改善に必要だ。本気の心配からの厳しさが、子どもの心を支える。平易な表現で読みやすく、忙しい教育現場の方々にも適した書籍だ。
(1650円 イースト・プレス)
(前)

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