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「問う力」を育てる理論と実践 問い・質問・発問の活用の仕方を探る

16面記事

書評

小山 義徳・道田 泰司 編
子ども主体の学びの実現へ

 各学校で、教師主導ではなく子どもたち自ら「問い」を立て主体的に学ぶ授業の展開を目指し実践されているだろう。しかし、多くの指導者は悩みながら模索しているのが現状ではないか。
 本書は学習者の「問う力」を育成する理論と実践の両面を解説するタイムリーな書である。300ページを超える内容は濃密で読み応え十分。執筆者はコラム編も含め17人。教育に関わる研究者や現職の教員に医学博士とさまざま。「問う力」を多角的に捉え解説されているのも興味深い。例えば医学会で質疑応答する力を扱う10章は、医学会に無縁な評者には興味深い内容だ。
 「問い」が生まれるには、学習者側にある程度の基礎知識が必要とのこと。その基礎知識を身に付けさせるための環境整備がどうあるべきか、また教師の指導力や家庭・地域との連携などについても考えさせられる。ただ、実践からは「問い」が生まれると調べずにはいられなくなる子どもの姿が見えてきた。「問う力」の育成は、子どもが学びの主体になるために必要な力なのだ。
 さらに、学習者の「問う力」だけではなく、教師の「発問」についても解説。発問が「問う力」の育成に大切な要素となる。
 前書きには5部から成る本書の内容を簡潔に解説し、各章について推薦する対象者を示す。とはいえ、この解説を読めば魅力的な内容に、きっと読破したくなるだろう。
(3080円 ひつじ書房)
(藤本 鈴香・京都市総合教育センター指導室研修主事)

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