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情報モラル教育の枠を超え、これからの情報社会を見据えたICT活用力を育む視点に共感

5面記事

企画特集

ひょうごGIGAワークブック

 情報モラルと情報活用をセットで学べる教材として「GIGAワークブック」(開発・制作=一般財団法人LINEみらい財団)が注目されている。そこで、現在活用中の兵庫県教育委員会・上田氏に導入の経緯や現場の反応などについて話を伺った。

 ―「GIGAワークブック」を導入したきっかけを教えてください。

 上田 令和元年からプログラミング教育の推進に注力し、次なる段階として情報モラル教育の促進を図ろうとしていた頃、ちょうどGIGAスクール構想等による1人1台端末の導入が始まりました。各自治体においてもクラウド利用のために1人1アカウントを配布し授業内外でオンラインでのコミュニケーションやデータ共有ができるようになった反面、児童生徒の活用上のトラブルを耳にするようになりました。
 兵庫県ではこれまでも、安全安心で主体的なインターネット利用のルール作りについて大人と子どもがともに学ぶ「スマホサミットinひょうご」、家庭でのルール作りを促進するワークシート、保護者向けの啓発リーフレットを作成するなど情報モラル教育に取り組んできました。
 また、令和2年度からは「GIGAワークブック」を開発した塩田真吾先生(静岡大学教育学部)を招き、各地区や県立教育研修所において情報モラルに関する研修会を開いていました。そういった流れから、県の新規事業として「GIGAワークブック」の兵庫県版を作ることにしました。

 ―県をあげての情報モラル教育の一環として「GIGAワークブック」作成を位置付けられたのですね。

 上田 はい。作って配布をするだけでなく、すべての先生に使い方を周知してもらうために研修会の実施、教員向け資料の作成までを一体化した「ひょうごネットモラルパワーアップ事業」を新たに立ち上げました。「ひょうごGIGAワークブック」の作成とともにウェブページを立ち上げ、自由にダウンロードすることができるようにしています。
 県内の学校が足並みをそろえることが重要なので、同時に情報モラル研修会も県主催で実施し、小中高特支の情報モラル教育担当者を対象に、情報モラル教育に関する知識、「ひょうごGIGAワークブック」作成の意図、活用の仕方を学んでもらっています。また塩田先生に研修動画の作成を依頼し、対面での研修会の実施だけでなく、ウェブページにその動画をアップして、校内研修や個人研修でも使えるようにしています。

 ―「GIGAワークブック」の魅力はどこにあるのでしょうか。

 上田 従来の情報モラル教材と違い、「GIGAワークブック」は、これからのICT社会を見据えて、安全に正しく活用する力を育む視点で作られている点です。また、教材部分に取り入れられているカード分類比較法は、児童生徒が「情報カード」を並べ替えたり、グループ分けをしたりする学習を始めると、「自ら発信してよい内容なのかどうか」など、友だちとの会話が自然に生まれ、主体的・対話的に情報モラルを学ぶことができます。
 友だちと自分の考えが視覚的に比較することができるので、他者理解も深まります。自分の端末にインストールが可能で書き込みも自由。クラウドなどに保存することで、これまでの自分の考えを見返すことができたり、端末を持ち帰ることで保護者の方と情報モラルについて学ぶことができたりするのも魅力です。
 すでに研修会を終えた先生方からは、「情報モラル教育の進め方についてイメージが湧いた」「今後は、教科を横断して活用していきたい」など、非常に前向きな感想をもらっています。教材のダウンロードページに研修用のオンデマンド教材、コンテンツカードデータも掲載しているので、そちらの活用も促しながら、先生方には独自に創意工夫した情報モラル教育を着実に実施してもらいたいと思います。


研修会の様子

情報活用の最初の一歩としても秀逸
鹿野 利春 京都精華大学メディア表現学部教授兼一般社団法人デジタル人材共創連盟代表理事

 「GIGAワークブック」は、文部科学省が示す情報モラル教育の要素をカバーしつつ、情報活用のための基本的な学習もできる教材だと思います。情報活用学習の最初の一歩として、1人1台端末を持った児童生徒に向けて情報活用の視点を持っているのが魅力の一つです。
 カテゴリーは小学生向けにビギナー(低学年向け)、スタンダード(高学年向け)、アドバンスド(中高生向け)の3つあり、児童生徒の発達段階に応じて活用できます。情報活用という面では、端末の扱い方や基本的な操作を学ぶこともできるようになっています。例えば、ビギナー版では、教材の冒頭でパソコンと目の距離を30cmの物差しの絵で示すなど健康面の内容が示されています。
 また、「調べる」「考える」「交流する」といったICT活用方法について場面ごとに具体例をあげ、友だち同士で確認し合いながらICT活用を習得する仕組みなど、初めて自分の端末を持った子どもの目線を大事にされていると感じます。教員向けの手引きには、学ぶ理由を児童生徒に説明できるよう、それぞれ項目ごとにその理由が書かれています。
 「GIGAワークブック」の使い方としては、社会科などで調べ学習の前に「調べる」の活動場面について教材を使用して学ぶことができます。児童生徒の学習全体を見渡しつつ、発達段階や授業の内容に応じて一つずつ取り上げると計画的に情報活用の基礎学習ができると思います。今後はICT社会のよき担い手を目指す「デジタル・シティズンシップ教育」の視点も包含していただけたら、さらに学びが広がるでしょう。

(かの・としはる)
 石川県の公立高等学校情報科・理科教諭・教育委員会、文部科学省高等学校情報科担当教科調査官を経て現職。新学習指導要領の改訂に携わり、「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」の教員研修用教材をまとめるなど情報教育の施策に携わる。

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