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学生服を取り巻くトレンド動向~中学校制服のモデルチェンジが活発化~

17面記事

企画特集

時代は「体操服」から「スポーツウェア」へ

男女ともブレザー化の流れに
 学生服のモデルチェンジは、私立高校をターゲットに進んだ校風や校訓を反映したスクール・アイデンティティーを表現する需要が落ち着いたことから、2018年頃に一端減少したが、性的少数者(LGBTQ)への配慮から進むブレザー化の流れを受けて、現在では中学校を中心にモデルチェンジが活発になっている。
 その傾向は、今年の春の商戦も継続することが予想されているとともに、小学校においても、これまで私服だった学校が家庭の経済面やそれに伴ういじめ問題等を考慮し、新たに制服を採用する動きが起きている。
 また、夏季の気温上昇やヒートアイランド現象が顕著になる中で、熱中症対策として夏服のクールビズ化を検討する学校も年々多くなっている。具体的にはノーネクタイを中心に、ポロシャツやTシャツ、ハープパンツなどのアイテムを取り入れた夏服スタイルだ。そのため、制服メーカーでは通気性や速乾性のほか、汚れがつきにくい・落ちやすい、紫外線カットや透け防止といった機能性を高めた商品の開発に取り組んでいる。

体操服のリニューアルで生活態度が改善

ダサいから、オシャレで高機能な体操服へ
 このような学生服のモデルチェンジに加えて、次なるトレンドとして注目されているのが「体操服・スポーツウェア」だ。各制服メーカーではデザイン性に優れたライセンスブランドの販売に加えて、素材選びや縫製技術によって機能性を高めた自社商品の開発に力を入れている。その結果、どのメーカーも堅調に導入する学校数を増やしている。
 こうした背景には、体操服にも時代にマッチした機能やデザインが求められるようになっているとともに、コロナ禍の長期化によって洗濯が手軽な体操服での通学が増え、存在価値が高まったことが挙げられる。また、冬の時期も教室内の換気が必須であったことから、防寒着として体操服やスポーツウェアを着用する機会が増えたことも影響しているという。
 とりわけ、部活動で着用するスポーツウェアと異なり、これまでの、いわゆるジャージと呼ばれる体育授業用の体操服は「ダサい」「野暮ったい」など学生には不評だった。これを見栄えのいい「かっこいいデザイン」に変えることで着用する意識を高め、だらしない着こなし方が改められるなど生活態度を改善する効果が指摘されている。つまり、時代のトレンドは体操服のスポーティー化へと傾いているのだ。
 また、デザインだけでなく、軽量で伸縮性や通気性に優れているもの、汚れが落としやすい、UVカット加工、アトピー対応といった機能性も年々向上しており、使い勝手の幅を広げている。さらに、防寒着としても着用できるウインドブレーカーやパーカ、スエットなどの需要も拡大傾向にあり、これらを加えたセットアップ提案を行う制服メーカーも多くなっている。

「ジェンダーレス水着」などスクール水着にも波及
 もう一つ、こうしたニーズはスクール水着にも波及している。スクール水着というと、男子はトランクス型、女子はワンピース型が定番だったが、男女とも上下2枚に分かれた「セパレート型」と呼ばれる水着が普及し始めている。肌の露出を少なくし、紫外線をカットする素材が使われているのが特徴だ。
 加えて、ニュースでも話題になったのが「ジェンダーレス水着」と呼ばれる男女とも同じデザインのスクール水着だ。上は長袖、下はハーフパンツといったスタイルで、男女差を強調しないように、ゆったりとしたシルエットになるように工夫がされている。
 こうしたスクール水着の変化はLGBTQへの対応だけでなく、体形やアトピーなどを理由に肌の露出を控えたいという子どもが増えているからにほかならない。
 去年の夏は、コロナ禍で中止となっていた水泳授業を3年ぶりに再開した学校も多く、入学後初めて水泳授業を受けることになった児童生徒からの注文が増えたという。再開を機に、新たな水着に切り替えた学校もあるなど、スクール水着をモデルチェンジする動きも当面続きそうだ。

コロナ禍の技術革新が新たな商品を生み出す
 人員不足や原料の高騰をもたらした新型コロナウイルスの影響で、制服メーカーは営業から生産、納品にいたるまで大きな打撃を受けた。とりわけ、生産ラインに遅れが生じて納品の調整が必要になったり、休校措置などの学校の事情によって採用が見送られたりしたことには忸怩たる思いを感じたはずだ。
 しかし、それに打ち勝とうした3年という時間経過の中で、AI・IoTなどを活用した自動化や省力化などの技術革新が飛躍的に伸び、新たな価値を創出する「学生服」「体操服」を生み出すこととなったのも事実である。また、従来から続けてきた国内生産へのこだわりによって、アパレル全般が海外生産にシフトする中で為替変動による影響や流通が滞ったのと比べ、安定的な生産が続けられたという利点があった。
 そうした面では、制服メーカーは自らの経営地盤を見直す機会になり、今後の制服づくりのあり方や生産体制・合理化の方向性を決める過渡期になったといえる。また、学校においても、これまで当たり前だと思っていた一人一人に合わせた採寸や短納期が、実はどれほど難しく例外的であるかを認識する機会になったともいえるのではないか。

保護者の8割近くが「制服代」が負担に
 このような大きな節目となった3年という時間経過を経て、制服メーカーでは時代のニーズに応える新たな商品開発をよりスピードアップして進めることになるだろう。となれば、次なる視点は、今後も学生服は学校文化を代表するアイテムとして続いていけるかということである。
 課題の一つは、よくマスコミやニュースなどによって「日本の学生服は高い」と耳にするように、年々価格帯が上がっていることだ。ただし、小ロットで多品種生産、かつ短納期が求められる中で高品質を維持していることを考えれば、よくぞ価格を抑えられるといっても過言ではない。むしろ、私服に置き換えた場合と比べると、年間の衣料費はかなり削減できるともいえる。
 それでも、国際NGOセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが昨年実施した調査によれば、新入学生(中1と高1)の保護者の8割近くが、特に負担を感じる費用として「制服代」を挙げていることからも分かる通り、このままの経済状況が続くことを考えると、品質と価格のバランスを考慮した商品ラインアップが必要になっていくはずだ。すなわち、海外生産も視野に入れた低価格化、生産・物流コストの合理化に向けた生産工場や物流センターの集中化にもより着手していくことが想定できる。
 ちなみに同調査によると、新入学生の「制服代」の平均は、中1が約7・5万円で、高1が約9万円。関東地方は全国平均よりも1~1・5万円ほど高くなっている。

学生服の良さをもっとアピールする
 一方で、SNS時代を象徴する現象として「学生服」には追い風も吹いている。近年では海外から日本の制服文化の良さや価値を認める声が起きており、学校で採用したり、ティーンエージャーを中心に私服として着用したりすることが起きている。実は、国内でも大人より子どもたちの方が制約のある学生服ならではの長所や魅力を理解しているケースが目立つ。今日の高校生の着こなし方、楽しみ方を見れば、それが如実に分かるというものだ。
 もちろん、そこには各制服メーカーが時代の流れに沿って新しい素材を開発し、デザインの追求や機能性を高めてきた経緯があるからにほかならない。だとすれば、学生服の価値を学校現場や保護者、社会にもっと理解してもらえるよう、訴求していくことが将来に向けたもう一つの課題といえるだろう。
 さらにいえば、社会構造が急速に変化し、多様性が広がる時代には、すぐにまた新たな価値や創造を求める潮流を呼び、学校や子どもたちのニーズも自ずと変わっていく。今後も、そんなわが国の高品質なモノづくりとサービスの結晶となる「学生服」づくりの進化に期待するとともに、「チーム学校」の一員として、子どもたちの将来に寄与するスクールソリューション事業など、学校が抱える課題に寄り添った提案にも注目したい。

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