運動の不器用さがある子どもへのアプローチ 作業療法士が考えるDCD(発達性協調運動症)
19面記事東恩納 拓也 著
特性理解、楽しく生活できるよう支援
スポーツに限らず、体を使って作業をしたり、新しい運動を習得したりするのが苦手な子どもたちがいる。そういう子たちは日常生活で困ったり、劣等感を抱いたりしやすい。親も心配するが、どうすればよいか分からず悩む。
本書は、作業療法士である著者が、協調運動(体の別々の部位を同時に動かすこと)の困難さを主症状とする「発達性協調運動症(DCD)」を持つ子どもたちが、もっと楽しく生活できるようにという思いを込めて、身近な人々がどのようにアプローチすべきかを分かりやすくまとめたものだ。
DCDは発達障害の一つで、有病率は5~11歳の約5~6%だそうだ。これを理解する上で特に大事なのは、本人の努力不足や経験不足が原因ではないということ。また、運動が苦手なのは決して悪いことではない。こうしたことへの理解を欠くアプローチは、かえって子どもを苦しめることになりかねない。
アプローチの目的は、その子の生活がより良くなることだ。そして基本は、運動の不器用さがあっても「楽しい」「できた」と実感できるようにすることだと説く。著者の、子どもたちへの温かい思いを感じる。
他の発達障害などにも共通することだが、「できない」原因が本人の努力不足でない場合もあるということを、教育関係者は基本知識として認識しておくべきだろう。
(2200円 クリエイツかもがわ)
(浅田 和伸・前国立教育政策研究所長)