新しい時代の学びに対応した教育環境に必要な視点とは
15面記事「未来思考」をもたなければならない理由
「学校施設整備指針」では、これからの学校が学校教育を進める上で必要な施設機能を、
(1) 高機能かつ多機能で変化に対応し得る弾力的な施設環境の整備
(2) 健康的かつ安全で豊かな施設環境の確保
(3) 地域の生涯学習やまちづくりの核としての施設の整備
―の3点で整理。直近となる2022年の改定では、そこに1人1台端末環境のもと「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実と、特別支援教育を巡る状況等を踏まえ、新しい時代にふさわしい学校施設の在り方について記載を充実させた。
その前提となる議論を進めてきた有識者会議による「新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について」の最終報告では、学び、生活、共創、安全、環境の5つの視点それぞれに「未来思考」をもって、これからの新しい時代の学び舎として目指していく姿を示すことをポイントに挙げている。
では、なぜそうした視点が必要かというと、社会変化が激しく、先行き不透明な「予測困難な時代」を迎えている中でも、たくましく生き抜いていける人材育成を図る教育へとシフトしていかなければならないからだ。そして、そのためには新学習指導要領が目指す「主体的・対話的で深い学び」の実現をハード面から支える、個人やグループでの多様な学びの機会や新しい教育手法に対応した教育環境を構築していく必要があるからに他ならない。
また、当然ながら、その教育環境には情報化社会で必須となるICTの活用、義務教育9年間を見通したカリキュラム、多様な教育的ニーズのある児童生徒への対応、地域社会や関係機関等との連携・協働といった視点をもつことが不可欠になる。
学校の持つ役割・在り方を再認識する
一方で、教育環境としては、ポストコロナ時代における学校施設という実空間の役割を見直すことも重要になる。児童生徒にとって安全・安心な居場所を提供するという福祉的機能、社会性・人間性を育む社会的機能を有するなど、学校の持つ役割・在り方を再認識することが問われている。
あるいは、授業でいえば単一的な機能・特定の教科等に捉われず、横断的な学び、多目的な活動へ柔軟に対応していくこと。ICTを活用した教育では従来の「同期・集合」の学びから、ネットやオンラインを介したデータ駆動型の「非同期・分散」した学びへと転換することも踏まえておかなければならない。
さらに建物自体には、災害などから児童生徒を守る物理的な安全を担保することや、持続可能な社会に向けて脱炭素化に貢献する視点をもつ必要がある。
楽しく通いたくなる学校に変える
その上で、何より大切になるのは、大人目線ではなく子どもたちの視点から学校施設を捉えて教育環境を計画していくことだ。すなわち、子どもたちが生き生きと活動できる、楽しく通いたくなる学校を目指すことである。
ある意味、ほとんどの学校施設が老朽化していることは、理想とする学び舎へと生まれ変わるチャンスを与えられていると置き換えることもできる。目指す教育を実現するためには、その器となる施設自体も変えていかなければならない。画一的な発想や既成の習慣を取り払い、10年、20年先の未来を見据えて、それぞれの地域の特色を生かした個性的で魅力のある校舎・教育環境づくりに取り組んで欲しい。