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一刀両断 実践者の視点から【第242回】

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不適切な指導を防ぐには

 《保護者から相次いだ苦情、体罰の訴え軽視した元小学校長「責任感じている」…中1男子が自殺》(読売新聞オンライン)という見出しの記事が掲載された。前任校長からの引き継ぎにより、担任には不適と知っていたものの希望者がいないのでという理由で担任につけたとのことである。
 読者の皆様ならばどうしただろうか。すなわちあなたが校長だったらという事である。ややもすると同じような判断をしては来なかっただろうか。

 私が校長最後の年に56歳の教師が赴任して来た。3年の担任にしたが、すぐに苦情が舞い込んだ。「人生はね。ほとんど苦しいのよ」と児童に話したそうである。子どもは家で、「人生ってそんなにつらいの?」と、親に話したのだ。
 本人を呼んで聞いてみると親の介護や自分の体のつらさから本音でそう思って話したという。経歴を調べると毎年学級崩壊を起こして、不登校児を出して臨時保護者会が何度も開かれていたらしいが、教委からは一切説明は無かった。
 早速、子どものためにも教員のためにも職を辞す事を勧めた。今辞めれば退職金はこれくらいになると説明したところ、翌日早速退職された。転勤してわずか7日目の事だった。
 後補充はないために数ヶ月はやりくりに苦労したが判断は間違っていなかった。しばらくして学校へお中元が届き、職員へ分けて労をねぎらった。

 今回のケースは校長のみの責任にする内容ではない。何故なら判断を誤らないように指導管理するのが教委であり、任命権者が機能していないからである。困りごとの相談が出来る窓口が開かれていないのであれば、経験の少ない校長なら判断に苦しむ状況であった。
 ただし、危機管理の視点からすると明らかに指導力不足であり判断の甘さが露呈しているのは明らかである。犯罪を未然に防げなかった責任は広範囲に求めねばならない。これは事件である。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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