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自己理解の心理学

13面記事

書評

武田 明典 編著
新しい知見・概念カバーした入門書

 大学の教養教育や教職課程で心理学を担当する研究者等19人による、心理学の入門テキストである。各分野にわたり基本的な事項や代表的な研究の例などが分かりやすく紹介されている。私は大学で心理学を専攻したが、当時学んだ、例えばパブロフのイヌの「条件付け」、ハーローのサルの「愛着」の実験などを懐かしく読んだ。もちろん新しい知見や概念も広くカバーされている。不登校、発達障害、協働学習、感情知能(EQ、EI)などにも触れられている。
 本書にも「発達検査に対する過剰な幻想」という言葉が出てくるが、心理学はマスコミ等でも非科学的な取り上げ方がなされがちで、誤解も多い。本書は全15章、150ページと簡潔で、心理学の基本を学んだり、おさらいしたりするのに手頃だろう。
 パーソナリティ、発達、認知、学習、知能など教育に深く関わるテーマが中心だが、対人コミュニケーション、自己肯定感にもそれぞれ1章を充てている。恋愛、悩み、就活などにも焦点を当てているのは、若い読者を意識してのことだろうか。
 特に初等中等教育では、人間もまた生き物として、時間軸の中で発達、成長していくのだということへの基本的な理解が欠かせない。急がず「待つ」ことが必要なときもある。こうした本は、それを思い出させてくれる。
(1980円 北樹出版)
(浅田 和伸・前国立教育政策研究所長)

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