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地元と連携で魅力化、小規模校同士で遠隔授業 少子化地域の高校教育報告

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中教審

中教審WG

 文科省は1日、今後の高校教育のあり方を話し合う中央教育審議会のワーキンググループ(WG)を開き、少子化が進む二つの自治体での取り組みを教育委員会の担当者からヒアリングした。複数の学校をオンラインでつないだ遠隔授業や、地域と連携した高校魅力化の事例の報告があった。委員からは、地域に密着した教育だけではなく、多様な進路を保障する教育を展開する必要があるなどの声が出た。

 WGでは少子化が進む地域での事例を長崎県教育委員会と北海道教育委員会がそれぞれ発表した。
 長崎県教委の担当者は小規模校の魅力化について話した。県内の離島や半島の地域では、都市部の長崎市や佐世保市にある高校に生徒が流出している。魅力づくりのため、県教委は高校のある市町と連携を深めており、農業高校では地元の動物園の協力を得た探究的な学びを実施する予定だ。
 小規模校同士をオンラインでつなぎ、小規模校単独では開設するのが難しい選択科目や習熟度別授業などに対応できる科目を相互に授業配信もしている。
 北海道教委の担当者も遠隔授業の取り組みを発表した。
 北海道は現在の小学校1年生が中学校を卒業する令和13年に、中卒者の数がピークの昭和63年の4割程度になる。遠隔授業は平成20年度から一部の高校で導入し、研究開発学校など文科省の制度を活用して進めてきた。小規模校に通う大学進学希望者のニーズに応える授業を増やそうと、昨年度、遠隔授業配信センターを設置。他校の開設する難易度の高い授業科目などを送っている。
 ヒアリングの後には意見交換が行われた。
 高校生の国際シンポジウムなどを主催している一般社団法人「グローカルアカデミー」の岡本尚也代表理事は、「小規模な学校では進学指導などの学習への支援が不足しているというイメージを変えていく必要がある。多様な進路先に対応できるよう、教員の数と質の確保や、地域人材を活用していくべきだ」と指摘。
 東北大学の青木栄一教授は、「地域に根差した教育をしても、多様な進路の保障があることが大事」とした上で、「それがなければ、その地域で生まれた子を不当に地元に縛り付けることになる」と話した。

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