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先生を、死なせない。教師の過労死を繰り返さないために、今、できること

12面記事

書評

妹尾 昌俊・工藤 祥子 著
100件の事例集め分析、対策を提言

 表題通りの内容だが、本書の重みは、教師の過労死等の事実を明らかにするため、独自の調査により100件近い事例を集め分析し、その上に対策を提言しているところにある。
 学校関係以外の読者に対しては、個々の事例や学校が置かれた状況等の解説を通じ、なぜ自ら志して教職の道に入った教師が死に追いやられるのかという実態や背景を、バイアス(偏り)なく伝えるものとなっている。
 一方、学校、行政等の当事者は、取り返しのつかない悲劇を防ぐために、本書の貴重な知見を生かしたい。本書には例えば「先生を続けられるかどうかは勤務校の運」という教師の言葉がある。そういう要素があるのは確かで、学校や教育委員会でやるべきことも多い。しかし、「運」で済む話ではない。
 文科省に対しても、高い理想はどんどん掲げるが、その実現に必要な人や予算を十分に用意してきたとは言えないと指摘する。私の経験でも、学校は教科担任、学級担任等の関係で、普通の職場より職員を休ませにくい特性がある。
 「学校が頑張れば、どうにかなる」と現場に押し付けるのではなく、全ての学校で教職員が過労死等に近づくことなく前向きに働けるように、条件整備、人の配置・確保、業務のスリム化等が現実の政策として進むこと、また、それについて社会の理解と支援が広がることを、著者らと共に願いたい。
(2420円 教育開発研究所)
(浅田 和伸・前国立教育政策研究所長)

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