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一刀両断 実践者の視点から【第229回】

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メンタルのトレーニング

 沖縄を主会場として来月5日に行われる「メンタルヘルス」のハイブリッドシンポは実に興味深い。
 メンタルの弱い大学生が多くなっている。先日、学生との会食の際に、ひとりの青年が「メンタル強いです」と話して来た。確かに目は据わっていたが、それ以外は普通の素直な学生であった。
 どうしてメンタルが強くなったのかと言うと、山奥で合宿して逃げられず、大食いのバトルもさせられて、戻してからがスタートと話していた事には驚いたが、そうした試練の中でメンタルがある程度鍛えられたと言いたいのだろう。
 何のためにメンタルを鍛えるかは人様々ではあるだろうが、これは経験によってかなり異なるものではないだろうか。
 猟師が鹿を取って解体して食する場面に呼ばれたことがある。そのシーンの強烈さに何を振る舞われたのかも記憶から飛んでいる。しかし、2度目は冷静に解体も食も受け止められた。
 思い出すのは、休み時間に鉄棒から落ちて腕の骨が飛び出てしまった児童が保健室に来ていた。教頭の私が呼ばれて駆けつけた。確かに綺麗な骨が20センチほど手首の上に飛び出ていた。子どもは自分の手を見て悲鳴をあげていた。骨がと叫んでいたのだ。
 この光景に慣れていない教師は右往左往してどう処置してよいのかを迷っていた。養護教諭もボーゼンとしている。
 救急車を呼んだの?と、聞くと皆が顔を見合わせた。すると養護教諭が何番でしたっけ?と、聞き返して来た。
 幸い私は災害現場での対応経験があったので、淡々と処置したが、ふと周りを見ると顔面蒼白で座り込んでいる教師や子ども達がいる事には驚いた。
 また、職員会議で意見を言った事に腹を立てた先輩教師が束になってオルグをされた。逆にひとりひとりを私から問い詰める事をさせて頂いた。
 あの発言の根拠は何ですか。教えてください。
 丁寧に誠実に誤魔化しを問い詰めた。虚偽を謝る先輩もいたが容赦はしなかった。
 ここには筋を通さないと次の犠牲者が出る事になるという使命感があったからやれたのだと思う。
 メンタルトレーニングにも様々な場合があるが、実践で役立つものにするには大義が必要であり、単なる手法ではいざと言うときに役立たず気休めにしかならない。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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