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学校などの指定避難所に災害用マンホールトイレを整備

12面記事

施設特集

断水被害により設置した災害用マンホールトイレ

和歌山県和歌山市

ライフラインとして重要なトイレの確保に
 南海トラフ地震防災対策推進地域及び津波避難対策特別強化地域に指定されている和歌山市は、大規模地震による多大な被害が予想されている。このため、災害時に断水などで水洗トイレが使用できなくなった場合も避難所のトイレ環境が確保できるよう、市内の学校や公園などの指定避難場所を対象にマンホールトイレの整備を推進している。
 「本市では地域防災計画のもと、平成21年から段階的に整備を進めており、今年4月時点で44施設・521基が整備済みです」と話すのは、企業局下水道部下水道企画課の井口一幸課長だ。
 災害用のマンホールトイレは、下水道管路のマンホールの上に仮設テントと便器を設けて使用するもの。構造としては仕切弁の開閉を利用した貯留型となっており、断水時はプール水などを用いて排泄物を直接下水道管に流せることで、避難所の衛生環境の悪化を抑制できるのが長所。同市の場合は防災用井戸を併設し、そこから注水する仕組みになっている。
 加えて、下水道の本管が破損した場合も、仕切弁を閉じることで一定期間貯めておくことができ、仕切弁がマンホールと一体化しているため地震動でも破損しにくいなど、災害に強いトイレシステムとして全国の自治体で導入が広がっている。
 なお、貯留管1基でマンホールトイレが5台設置(1日当たり約500人利用)できるが、「避難者数を考慮して、1指定避難場所当たり5台~30台(車椅子対応型トイレ含む)を整備しています」と答える。また、緊急時にすぐに使用できるよう、周囲に仕切弁の蓋の開け方などを描いた看板を設置しているのも同市ならではの配慮だ。

初めての実用で見えた課題を今後に活かす
 確かに、せっかくインフラを整備しても、いざというときに使用できなくては意味がない。それゆえ、下水道部では地震、津波、水害に対応した下水道のBCP(業務継続計画)の一環として年1回程度は設置訓練を実施しているほか、各地区の自主防災組織も交えた設置訓練も行っている。また、高校での避難所設置訓練においてマンホールトイレの設置実演をした事例もあるとのこと。
 こうした中、昨年10月に大規模な断水被害が発生した際に、初めてマンホールトイレを使用することになった。実際に設置したのは、断水区域内の7施設80基。このときの設置は水洗トイレの水が流せなくなった緊急対応であり下水道部が行ったという。
 「約1週間の使用でしたが、多くの方に使用してもらった一方で、衛生面では便座の汚れに対する清掃、使いやすさという点では夜間の照明、テント内の熱中症対策、雨天時の車椅子の泥はねなどへの対応が必要ということが分かりました」と振り返る。
 また、夜間での設置により時間も想定以上にかかったことを挙げ、日頃の設置訓練とともに、そのノウハウを継承していく重要性を再認識することに。「避難所生活が長期化するほど衛生・健康両面でトイレの確保が重要になります。こうした現場目線・使用者目線で得た課題を教訓に、施設管理者や近隣住民等との協力体制を築いていく必要があります。同時に、災害発生時でのトイレ環境がより良いものとなるように改善し、いつ起きるか分からない有事に備えていきたいと考えています」と気を引き締めて話してくれた。

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