特別な支援が必要な子たちの「自分研究」のススメ 子どもの「当事者研究」の実践
18面記事熊谷 晋一郎 監修
森村 美和子 著
困り事を自己開示 気付きと理解生む
周りの制止を聞かずにしゃべり続けてしまう子、場の状況が理解できず自分の思いを優先させてしまう子、自分のことは棚に上げて先生のように注意をしてしまう子…。多様な支援ニーズのある子たちが「自分の困っていること」を研究対象にして、ある時は先生を、ある時は保護者らを、共同研究者に加え「自分研究」することで、困り事に折り合いを付けていく。
特別な支援が必要な子どもへのアプローチ方法はさまざま。ここに「自分研究」という新たな手法が加わった。監修者は障害者の「当事者研究」の提唱者として知られる。
「子ども研究員の実践事例集」として紹介する「子どもたちが取り組んできた『自分研究』」(第2章)は、研究過程を示し参考になる。困り事をキャラクターで表現して、困難を外在化する。友達とのブレーンストーミングで知恵を借り、場合によっては他の先生にも相談する。研究内容をまとめてプレゼンテーションしたり、成果物としてまとめたりする。その研究過程や研究成果の発表によって、周囲に気付きが生まれたり、当該児童への理解が深まったりする。実践の進め方と理論は「『自分研究所』開設のススメ」(第3章)や、第4章の監修者による「解説」で知ることができる。
実践では全てがうまくいくわけではないと断りが入るが、困り事を自己開示しながら成長していく子らの姿は感動的だ。
(1980円 金子書房)
(矢)