台湾で日本人を祀る―鬼から神への現代人類学
12面記事三尾 裕子 編著
台湾には、かつての支配者である日本人を信仰対象とする祭祀施設の廟や祠が多数存在する。日本を出自とする人の霊魂が神として祭られているのだ。
慶應義塾大学東アジア研究所共同プロジェクトが研究成果をまとめた本書では、これを「日本神」と名付け、民間信仰に埋め込まれた植民地経験・戦争経験と民衆の歴史認識や、新しいメディアを通した観光化の中で生成する「日本神」像を探っている。
植民地支配を受けた人々や子孫がかつての支配者を神に祭る、この奇妙に見える現象をどう理解すればいいのか。台湾に現存するうちの49カ所の廟の調査結果を基に、その問いに迫るとともに、台湾の日本人祭祀を日本統治の肯定と結び付ける風潮に対しても、歴史人類学の立場から論考している。
(5940円 慶應義塾大学出版会)
(Tel03・3451・3584)