各自の興味に沿う課題設定 新科目 高校はいま 下
8面記事設定した課題について、企業の担当者から助言を受ける生徒たち=神奈川県立藤沢西高校
総合的な探究の時間
高校で総合的な探究の時間(総合探究)が始まった。教科の「見方・考え方」を働かせ、自ら問いを見つけて探究する。そうした力の育成を目標に、これまでの総合的な学習の時間より「探究の質が高度化し、自律的に行われる」(学習指導要領解説)のが特徴だ。どんな研究テーマを設定させて、どう指導するのかが学習の成否を握る。
県の研究開発校として総合探究に取り組んできた神奈川県立藤沢西高校では、生徒が研究テーマを決める際に自身との関わりを意識させている。「自分にとって(テーマは)どのような楽しみがあるか」「現在抱えている困り事は何か」など四つの項目から考えさせてきた。
生徒が挙げるテーマは授業からの影響も大きく、お金や医療など。公民科の授業で会社情報などを載せた出版物を使った時は、投資をテーマにする生徒が多かった。テーマを決めたら概念図などを使って視野を広げ、課題を見つけていく。
3年生からはゼミ形式で授業を進め、大学や企業などの人を招いた報告会も実施してきた。
同校が総合探究で目的としているのは課題発見力や論理的思考力、情報収集能力といった学校の掲げる10の資質・能力だ。受け身の教育をするのではなく、生涯の基盤となる力を養いたいという思いから設けた。
3年担任の吉中真菜恵教諭は「探究の時間となったことで、生徒が主体となり、自分の興味のあることに目標を立てて取り組めるようになった」と評価する。
宮城県白石高校は、春に総合探究の研究テーマを考えさせるきっかけづくりとして、大学や企業などから講師を招き、講演会を開いている。
1、2年生合同でゼミを実施している同校では、SDGs(持続可能な開発目標)のテーマから教員が環境問題や教育問題などのゼミを設定。生徒たちが興味のあるゼミに集まる。昨年開いた町おこしゼミでは、特産品のメニューを開発したり、SNSでの情報発信を提言したりした。
今年5年目を迎える同校の総合探究だが、教員の指導方法は現在でも課題がある。時に専門外の分野に教員はどう関わるか。佐藤浩校長は「教科とは異なり、(生徒の学習を円滑に進めるための)ファシリテーション能力が求められる」と強調する。
探究そのものの評価についても「1年間取り組んでも思うように進まない研究もある」と述べ、生徒に学習成果をいかに感じさせられるかが難しい点だと指摘する。
一方で、自分で課題を設定・情報収集して分析し、まとめて表現する探究の学びは、多面的評価を掲げた大学入試改革でも重視されている。
平成30年度に探究科を設置し、探究学習に取り組んできた山形県立山形東高校は一昨年度、1期生が卒業。東京大学の推薦入試(学校推薦型選抜)を受験した3人全員が合格した。同校の須貝英彦校長は「苦労が成果となって表れた」と安堵と喜びの表情を浮かべた。