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教育DXに向けたGIGAスクール構想の取り組み

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特集 教員の知恵袋

 教育現場において、“教育DX”という言葉を耳にする機会が増えました。しかし、概要や目的をよく分かっていないという方も多いのではないでしょうか。

 文部科学省では、教育改革案のGIGAスクール構想を次の展開へ進めて、教育DXを実現することを目指しています。今回は教育DXの概要のほか、GIGAスクール構想を次の展開へ進めるために欠かせない取り組みについて解説します。

教育DXとは

 DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して、新たな商品・サービスを提供したり、新たなビジネスモデルを開発したりすることです。教育DXは、教育現場におけるDXを指します。

 文部科学省では、2019年12月に、多様な子どもたちを誰一人取り残すことない、個別最適化された学びの実現を目指すGIGAスクール構想を打ち出しました。このGIGAスクール構想の次なる展開として、教育DXが示されています。

 教育DXを実現するには必要な措置を講じたうえで、GIGAスクール構想を次なる展開に進めることが重要です。

出典:文部科学省『GIGA スクール構想の実現へ』/内閣府『オンライン教育等の活⽤について』/総務省『令和3年版 情報通信白書

教育DXに向けたGIGAスクール構想の取り組み

 GIGAスクール構想を次なる展開に進めるには、デジタル教科書の実装のほか、1⼈1台端末から得られる教育データの利活⽤などが求められます。そのうち、教育データの利活用については、デジタル庁や関係省庁が、2022年1月にロードマップを策定しました。

 そのほか、教育DXの実現へ向けた土台となる取り組みには、次の2つが挙げられます。

・学校教育のデジタル化
・ICT環境の整備

出典:文部科学省『GIGA スクール構想の実現へ』/内閣府『オンライン教育等の活⽤について』/デジタル庁『教育データ利活用ロードマップを策定しました

教育のデジタル化

 GIGAスクール構想の取り組みが本格的に開始された2021年度から、教育のデジタル化を実現するために、1⼈1台端末と学校ネットワーク環境などの整備が急ピッチで行われました。

 デジタル教科書や端末を利用した遠隔授業、オンデマンドの動画教材などを導入することにより、発達段階に応じた対面指導のほか、遠隔・オンライン教育のハイブリッド化を目指すことが目的です。

 一方、運用の地域差があることやネットワーク回線のスピードが不十分なことなど、課題も顕在化しています。なお、文部科学省は、学習者用デジタル教科書について、2024年度の本格的な導入を目指しています。

出典:文部科学省『文部科学省におけるデジタル化推進プラン』/内閣府『オンライン教育等の活⽤について

ICT環境の整備

 GIGAスクール構想の推進、教育DXの実現にはICT環境の整備も端末の整備状況も欠かせません。

 文部科学省の『義務教育段階における1人1台端末の整備状況(令和3年度末見込み)』『高等学校における学習者用コンピュータの整備状況について(令和4年度見込み)』では、現時点における端末の整備状況が次のように示されています。

義務教育段階
・全自治体等の98.5%にあたる1,785自治体等の整備が2021年度内に完了する予定
・全体の1.5%にあたる27自治体は、2022年度内の整備が未完了

高等学校段階
・全都道府県における2022年度1年生の1人1台端末の環境整備が2022年度中に完了する予定
・学年進行による整備を進める自治体を含めて、全学年の1人1台端末の環境整備が2024年度までに完了する予定
・2021年12月末時点では、47自治体のうち13自治体の公立高等学校が整備済み

出典:文部科学省『文部科学省におけるデジタル化推進プラン』『義務教育段階における1人1台端末の整備状況(令和3年度末見込み)

学校のICT化を⽀える⼈材⽀援制度

 GIGAスクール構想の推進においては、デジタル化やICT環境に対応できる教員の対応力や指導力が欠かせません。教員の指導力を向上するためには、教職員⽀援機構における研修動画を活⽤したオンライン研修を実施する方法があります。

 また、学校のICT化を支える人材を育成するために、次のような人材支援制度を活用するのも一つの方法です。

・ICT活⽤教育アドバイザー
・ICT⽀援員
・GIGAスクールサポーター

 これらの人材支援制度を活用することで、ICTの環境整備や指導⽅法、ICT活⽤の⽀援を滞りなく進められるようになります。

出典:内閣府『オンライン教育等の活⽤について

GIGAスクール構想を支援する政府の取り組み

 文部科学省は、1人1台端末ならびに高速大容量通信環境の積極的な活用を促進して、全国の教育委員会・学校を支援するために、GIGA StuDX推進チームを設置しました。

 GIGA StuDX推進チームでは、次のような活動を行います。

・ICTの利活用を推進する教育委員会等の担当者・教員に有益な情報を定期的に配信する
・教育委員会等と日常的にやり取りを行い、現場とのネットワークを構築する
・全国の教育委員会等の担当者が有益な情報交換して、知見を深められる場を構築する など

出典:文部科学省『文部科学省におけるデジタル化推進プラン』/内閣府『オンライン教育等の活⽤について』/政府CIOポータルサイト『GIGAスクール構想など教育のデジタル化の推進に向けた政府全体の取組について

政府・自治体・学校の連携で目指す教育DXの実現

 文部科学省は、個別最適な学びの実現を目指すGIGAスクール構想を次の展開へ進めて、教育DXを実現しようとしています。

 デジタル教科書の実装や遠隔授業、教育データの利活用などによって個別最適な学びを実現するには、学校教育のデジタル化のほか、ICT環境の整備を一刻も早く完了させる必要があります。

 また、学校においては、GIGAスクール構想に対応できる教員を育成するために、研修動画を用いた教員へのオンライン研修の実施のほか、⼈材⽀援制度も活用できます。

 教育DXの実現には、政府・自治体・学校が連携しながらGIGAスクール構想の取り組みを進めることが重要です。GIGAスクール構想の詳細については、こちらの記事で解説しています。ぜひご一読ください。

「GIGAスクール構想の目的とは?予算や環境整備、指導者に求められるポイントを解説」を読む

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