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地元企業と連携し、地域社会とつながる活動を

10面記事

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フィードバックを熱心に聞く生徒

 本年度より高校で「総合的な探究の時間」が本格的にスタートした。従来のように教師が教えるだけではなく、生徒自身が課題を設定し、情報を収集し、それらをまとめて発表する力が必要となる。東京都立篠崎高等学校では、探究学習を担当する唐仁原友紀教諭を中心に、4月から2年生(280人)を対象に地元企業からテーマ(課題)をもらいグループで探究する「総合的な探究の時間」「地域探究学習」を始めた。6月18日に行われた途中発表会の様子を取材した。

東京都立篠崎高等学校

地元企業との探究活動のきっかけは
 江戸川区出身者が生徒の多くを占める東京都立篠崎高等学校では、地元企業の課題解決を通して、将来地域社会に貢献できる人物の育成を目指す、ふるさと教育も兼ねた探究活動が行われている。探究活動のきっかけについて唐仁原教諭は「本校が東京都より『地域探究推進事業』の指定を受けたこともありますが、学習指導要領が改定され、『予測困難な時代』を生き抜き、生徒一人一人の希望進路の実現を図るために、他者と協働しながら自ら課題を見出し、それを多面的・多角的に分析をしながら納得解を作り上げる、そういったこれからの時代に求められる力を身に付けることができるように、という思いで授業を行っています」と話す。
 本年度は、株式会社ポポラマーマと江戸川区農業経営クラブからそれぞれ三つずつテーマ(課題)をもらい探究活動を始めた。テーマについては、株式会社ポポラマーマからは「生パスタを使った新メニュー」「時と場所を鑑みた広告宣伝アイデア」「食品ロスを減らすアイデア」。江戸川区農業経営クラブからは「農家の人手不足を解消するためのアイデア」「小松菜のブランディングアイデア」「農のある風景を継続していくアイデア」といった具合だ。

探究活動の内容は
 同校の探究活動は、1学期に企業の課題の背景を考える活動。2学期に企業の課題を解決するプランを考える活動。3学期に江戸川区の課題を解決するプランを考える活動と、年間を通したものになっている。3月には集大成として、生徒が各テーマに対して考えたオリジナルプランを最終発表会でプレゼンテーションする予定だ。
 始めたばかりの「総合的な探究の時間」「地域探究学習」では教員も生徒も手探りで授業を行っている。「担任や副担任の先生は専門分野を離れたテーマについて学習を進める特性上、ティーチングよりもコーチング、ファシリテーターに重きを置いた指導を心掛けてもらっています。進むべき方向性を『教え込む』のではなく『一緒に考えながら』生徒が進むべき方向性を自ら見つけられるように指導を行っている」と唐仁原教諭。
 1学期は、企業講演とデザイン思考のフレームワークのワークショップを行い、企業・団体が抱える課題の捉え方やどうしたらその課題を解決することができるのか、探究の方法を学んだ。また、さらに深い学びにするためにジグソー法を用いたワークシートを作成し、グループで協力しながら生徒なりの案をシートに書き込んだという。

途中発表会を通して、今後の課題を考える
 途中発表会に向けて生徒たちは、デザイン思考のフレームワークに基づき、各テーマの背景を調べ、グループごとに問題提起する事柄を決めた。
 発表会では、グループごとに決めた問題提起に加え、企業・団体からテーマごとの問題提起をもらい、それぞれの問題提起に対して深層ニーズとインサイトを発表した。ここでの深層ニーズは、ユーザー自身は認知していないが、相手から提示されれば受け入れる問題。インサイトとは、ユーザー自身も認知しておらず、受け入れるかもわからない問題のことだ。
 小松菜のブランディングアイデアをテーマとしたグループは、小松菜の知名度を上げるために「給食で小松菜のメニューを作ってもらう」や「ゆるキャラを作ってグッズ販売をする」「サンリオやディズニーといった有名なキャラクターとコラボする」など高校生らしいアイデアがみられた。
 食品ロスを減らすアイデアをテーマにしたグループでは、食べ残しに焦点を当て、「お客様の過剰注文を防止するために、食べ残しの残量を調べ、適切な量を注文できるように、目安の量を情報公開する」「食べ残した食事はテイクアウトできるようにする」といったアイデアを発表した。
 発表後は各テーマを担当している企業・団体の担当者からフィードバックを受けた。「大きな企業とコラボするためにどのようなことが必要だろうか」「テイクアウトの容器はどのような素材がよいだろうか。環境問題を踏まえて考えよう」など、発表した内容に対して新たな課題となる点について指摘も出た。


役割分担をして発表する


他のグループの発表中も生徒たちはメモを取っていた

最終発表会に向けた目標と意気込み
 1学期の途中発表会を経て、今後の目標や意気込みについて唐仁原教諭は「本校での『総合的な探究の時間』『地域探究学習』はまだ始まったばかりで、最適解としての学習成果を上げることは大変難しいと考えています。しかし、生徒の探究学習の取り組みを見ている中で、企業や団体、行政の方とコミュニケ―ションを取りながら、生徒独自の『納得解』を何とか見つけようとしているのを感じます。これまでの学習活動をさらに進化させていきながら、江戸川区の企業や団体、行政の皆さまにより良い地域社会の実現に向けた提言をまとめられるように、今後も活動を続けます」と決意を語った。

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