今、消費者教育をみつめる 「消費者教育シンポジウム2022」開催
10面記事グループワークで意見を交わしポイントを模造紙にまとめる
公益財団法人消費者教育支援センターは6月27日(月)に国立オリンピック記念青少年総合センターにて「消費者教育シンポジウム2022」を開催。今回のシンポジウムのテーマは「次代の社会の担い手をはぐくむ コンシューマーシティズンシップ」。同シンポジウムは2部構成で行われ、学校教員をはじめ行政関係者や企業関係者なども多く参加した。
成年年齢引き下げを意識した教材などが受賞
第1部では消費者教育教材資料表彰2022の表彰式が行われた。同表彰式は消費者教育の実践において有益で効果的な教材や資料を発掘、周知することを通じて、学校現場の消費者教育の普及と促進を図ることを目的としたもの。
今回は、行政部門24教材、企業・業界団体部門27教材、消費者団体・NPO部門15教材の合計66教材の応募があった。そして厳正なる審査の結果、受賞教材が決定した。受賞教材の特徴としては、「デジタル化やアクティブラーニングへの対応・配慮」や「成年年齢引き下げや新学習指導要領への意識」「授業の中での活用のしやすさ」などがみられた。また、GIGAスクール構想の影響で視聴覚資料も増えており、これからの学校現場において需要が高まりそうだ。
消費者教育や主権者教育などに焦点
第2部では「次代の社会の担い手をはぐくむ コンシューマーシティズンシップ」をテーマに基調講演と実践報告、グループワークが行われた。
基調講演では、弁護士・文部科学省消費者教育アドバイザーの島田広氏と鳥取県デジタル・シティズンシップエデュケーター・国際大学グローバル・コミュニケーション・センター客員研究員の今度珠美氏が登壇。島田氏は、
(1) 消費者教育推進法の成果と課題
(2) 成年年齢引き下げと消費者市民社会
(3) ポストコロナと消費者市民社会
―の3つのテーマについて語った。今度氏は、デジタル・シティズンシップとは何かや、ネットという公共空間でのマナーや振る舞いをポジティブに学ぶ方法、またデジタル・シティズンシップの授業例などを紹介。近年ネットトラブルが増えていることもあり、参加者の興味を引いた。
実践報告では、ドルトン東京学園中等部・高等部と山形県立小国高等学校の2校が発表を行った。
ドルトン東京学園中等部・高等部の大畑教諭は「次代の投票行動が未来をつくる」をテーマに多数決を具体例にあげ「常識を疑う力」「合理的に選択する力」を意識した授業を紹介。山形県立小国高等学校の加藤教諭は「高校生が主体的に社会参画する場づくり―小国高校の挑戦―」をテーマに、社会に属しているという意識を高校生に持たせるため、地域の人と活動させた様子を発表した。
被害者防止にとどまらないこれからの消費者教育は
グループワークは、参加者と講師、スタッフ全員がグループに分かれ実施。同ワークは「一つのビジョンを描くことではなく参加者が何か気づきを得ること」が前提に置かれ、参加者は「民法改正した今描く消費者教育のビジョン」について話し合った。活動を通して参加者からは「消費者教育は被害を防ぐためだけではない」「楽しいことはみんなが集まる、まずは大人が自分で楽しく地域で活動するロールモデルになる」など意見や感想の声があった。
今年度4月に成年年齢が引き下げられ、消費者教育の必要性が高まっている。特に契約については消費者被害やトラブルに合わないための教育にばかりに目が向きがちだが、これから新成人になる生徒に対して、自らで考える力を育む教育も求められるだろう。