「学びがい」のある学級 子どもの「声」を引き出す教師の言葉がけ
18面記事白坂 洋一 著
主体的で互恵的な集団づくり
区内の小・中学校を訪問すると、新規採用教員を含め5、6年未満の若手教員の多さに気付く。皆、本当に懸命に教育活動に当たっているものの、子どもとの関係性、学級経営、学習指導に悩んでいる姿を目にし、耳にする。評者は小学校において、担任が授業のほとんどを担当する中、学級経営と学習指導を別物と捉える考え方に首をかしげている。そういう中、本著のテーマ「『学びがい』のある学級」という表現に魅力を感じた。
著者は「教えたいことは子どもの中にある」という信条の下、子どもの声を引き出す教師の言葉がけの重要性を一貫して訴えている。学級づくりで著者が常に意識していることは、子どもたちがいかに「自然体」でいられるかであり、そのために「どうしたい?」「その気持ち、分かる」「ありがとう」の三つの言葉がけを意識的にしているとのことである。
また、日記指導や読書活動、探究活動、ものづくりなどを例に挙げ、各教科、総合的な学習の時間を横断的に組み入れ、いわゆるカリキュラム・マネジメントの手法で、一人一人の子どもの育ちと学びとともに、学級の子どもたちの互恵的な支え合いを高める取り組みを示している。そして、子どもの主体性の醸成という点から、子どもの問いや願いを出発点とし、活動を子どもに任せることと、教師の水面下での綿密な下準備の重要性も説いている。
(1980円 東洋館出版社)
(中川 修一・東京都板橋区教育委員会教育長)