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長崎・沖縄修学旅行をリアルな探究の場に

13面記事

企画特集

沖縄の大学生とワークショップ

平和の実現に向けて自分たちができること
東京都 山脇学園中学校・高等学校

6年間の探究で主体的な姿勢を育てる
 山脇学園中学校・高等学校(西川史子校長・東京都港区)は、現代社会のさまざまな課題の解決に挑戦し、社会に貢献する「志」を持った人材の育成に取り組んでいる。高校2年で行う「平和学習」をテーマにした修学旅行においても、それまで培った知識をベースに、各自の探究を深めていくことがねらいになっている。
 文系コースによる長崎・沖縄修学旅行「世界の平和について考える」を引率した砂口義智教諭(高2学年部長)は「もともとは長崎で平和学習を行ったあと、大分に向かって立命館アジア太平洋大学の留学生と交流する機会を設けていた。しかし、熊本地震が起きて実施が難しくなり、3年前から理系コースと同じ九州から沖縄を巡る行程になった」と語る。ただし、それも新型コロナウイルスの影響を受けて短縮実施となり、4泊5日を通した平和学習プログラムを行えたのは、今年3月の修学旅行が初めてとなった。

東京では気づかない多面的な考えを
 行程としては、1日目の長崎が原爆資料館と被爆者による体験講話が柱で、2日目は班別行動による自主研修。3日目に沖縄へ移動し、コースに分かれてシーカヤック、洞窟見学、シーサーつくりなどを体験。夜には沖縄の伝統芸能の一つであるエイサーを鑑賞した。「踊り手の人が単に演舞を披露するだけでなく、自分たちはこうした思いで踊っているんだと熱く語る姿から、生徒たちも感銘を受けたようだ」と口にする。
 4日目の午前中は、沖縄県平和祈念資料館とひめゆり平和祈念資料館を見学。午後のフィールドワークでは、クラスごとに米軍基地がある町に赴いた。そこでは、騒音被害などどういった状況にあるのかを自分の目で確かめるとともに、基地がある現状を地元の人たちはどう考えているか話を聞いたり、質疑応答の時間を作ってもらったりした。
 「東京にいると、どうしても基地があるのはよくないとか、基地の負担を軽くすべきという論調になりがちだが、基地があることで町の経済が回っている面があること。戦争体験がない若い人たちにとっては、基地との共存を支持する考えもあることに気づく。だが、その一方で日本がウクライナのような状況になったとき、最初に攻め込まれるのが沖縄になるのではという怖さも抱えている。地元の人たちの何が正解かは分からないという声を聞いて、現実の重みみたいなものを感じ取ったようだ」
 夜には修学旅行の集大成としてワークショップを実施。沖縄の大学生が進行役を務める中で、それぞれが見たもの体験したものについて共有し、未来の平和の実現に向けて自分たちは何ができるかについて話し合った。

将来に生かすためのプロセスに
 修学旅行が平和学習に重きを置いていることについては、「平和学習をきっかけとして、社会で起きていることを『自分ごと』として考えて、将来どういうふうに貢献していけるようになるのか、それを考えてもらうためのプロセスにしたい」と考えている。
 それには歴史を含めて現在の社会を俯瞰的に見ることが重要になるため、現地に行く前の探究の時間では、歴史的なアプローチとして長崎の原爆を取り上げた。
 原爆の投下については、「ひどい」「被爆者がかわいそう」が日本人の一般的な感覚だが、アメリカ側の視点で見ると、大戦を終わらせるためには必要だったという意見が根強い。「日本とアメリカの人たちが、お互いの考えや感情を共有できるようにするためにはどうすればいいか。たとえば被爆者である林京子の小説を読ませると、原爆は体を傷つけるだけでなく、長い時間にわたってその人の人生を苦しめていく兵器であることが分かる。その現実を見据えたとき、風化させずに伝えていく意義を訴えた生徒もいた」と語る。

事後学習でさらに考えを深める
 また、生徒も個人でテーマを決めて調べ、その都度クラスで共有。さまざまな視点から物事を考えていくことを繰り返してきた。
 ただし、修学旅行に行く前は「基地問題はどうしたら解決できるか」「核兵器のない社会は可能なのか」といった課題に対し、現実に向き合うという点ではフワッとした考えに留まっていたという。「ちょうど今、修学旅行後の事後学習の段階に入ったところになるが、その点については以前よりはいろんな側面からの考えを出し合えるようになってきた。各生徒がまとめたレポートをクラスで共有したとき、どういった意見が出てくるか楽しみにしている」と期待した。

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