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二極化する学校 公立校の「格差」に向き合う

17面記事

書評

志水 宏吉 著
長年の現場研究踏まえ脱却の道論ず

 新自由主義が大手を振っている現在、社会における格差が増大している。コロナ禍にもかかわらず、富裕層や大企業はひたすら富を蓄え、経済的貧困や生活困窮に苦しむ庶民との差は歴然としている。もはや、平等で公正な競争が成り立たない社会となっている。
 本書にあるように、かつては、能力と努力で業績を上げ競争に勝てば、その先に未来があるというメリトクラシーを信じることもできた。しかし、いまでは、親が富と教育的願望を持っている子どもだけが自らの未来を選択できるペアレントクラシーの時代となっている。東大生の半数以上が私立高校出身者で占められている事実が、その一端を示している。同じく、大阪市西成区の複数の中学校が、学校選択制の結果、選ばれる学校とそうでない学校に二極化していった様子は、過酷な現実を映し出している。
 著者は、このような教育における格差について、教育社会学的な調査研究に基づいて正確に把握する一方で、そこから脱却していく公教育の在り方を論じている。それは単なる理想論ではなく、著者が長年にわたって実施してきた学校でのフィールドワークから着想したものである。学力を伸ばすだけでなく、地域とのつながりを重視し、一人一人の児童・生徒を大切にする学校教育実践の成果は、公教育のあるべき姿を指し示している。そこにこそ、私たちが依拠すべきものがある。
(2200円 亜紀書房)
(都筑 学・中央大学名誉教授)

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