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CO2濃度の遷移を見える化、安全な音楽授業を

6面記事

企画特集

音楽室に設置されたCO2センサー(右側室内機の左上に設置)とその拡大写真

「CO2計測による3密回避支援サービス」導入事例
横浜市立西寺尾第二小学校

 学校では新型コロナウイルスの感染リスクを低減するため、こまめな換気が重要となっている。だが、目に見えないものが相手になることから、換気の目安が不確かなのも事実。そこで注目されているのが、教室内のCO2濃度を一定時間間隔で計測・管理し、基準値を超えた場合は音声等で通知して換気を促す、セイコーソリューションズ株式会社の「CO2計測による3密回避支援サービス」だ。ここでは、4月から音楽室を中心に運用を開始した横浜市立西寺尾第二小学校の宮崎里子校長に、導入意図やCO2値をモニタリングできる効果を聞いた。


横浜市立西寺尾第二小学校 宮崎校長

安心して音楽室の活動を行いたい

 「学校活動を見渡しても、呼気の心配が高いのが音楽室の活動です。歌うときは向かい合わないように工夫する、マスクは外さないなど気を使うことも多く、まさに音楽教育が不遇の時代を迎えているといっても過言ではありません」と宮崎校長。
 確かに、まん延防止等重点措置が解除された現在も、合唱や管楽器演奏にはいくつも制約を抱えている。自身が音楽教諭だったこともあり、少しでも安心して音楽室の活動を行う方法はないかと考えていたとき、同じ市内の中学校が感染リスク低減対策として採用したことを知ったという。
 この「CO2計測による3密回避支援サービス」は、人感センサーにも代用可能な高精度センサーでCO2濃度の遷移を見える化。管理者のPCに常時表示することで、適切な換気を促すことができる。しかも、クラウドサービスのため、新たに必要な機材はCO2センサーのみ。センサーも工事不要で設置でき、簡単に導入できるのが特徴だ。

音声で警告し、迅速な対応を促す

 さっそく、2月にはデモ機を借りて音楽室で検証をスタート。CO2値の計測結果はモニター画面に、800ppm未満が「良好」(緑)、1000ppmまでが「換気注意」(黄)と表示される。
そして、厚労省の基準値1000ppmを超えた場合は赤色で「換気必要」と表示するとともに、「CO2濃度が基準値を超えました。換気をしてください!」と音声で警告し、迅速な対応が図れるようになっている。同時にメールでも通知されるが、見落とす恐れもあることから、何よりも換気のタイミングを逸しないことを重視した設計になっているのだ。
 また、宮崎校長も画面の色が変わることで、換気の状況が一目で分かると評価。「それゆえ、音楽の先生は不安の解消になると喜んでくれました。子どもたちの関心も高く、モニターを見ながら少し上がったよ、下がったよと報告しています」と話す。

モニタリングできる効果を実感、保護者の安心材料にも

 一方、これまで学校内でCO2濃度を計測したことがなかったことから、ほかにも心配な場所はないかと持ち歩いてモニタリングも実施した。その結果、「教室自体は廊下と教室の間の壁をなくしたオープンスペース型であることから、十分に換気が行き届いておりCO2濃度に問題はありませんでした。むしろ、先生方が集まる放課後の職員室で高くなっていて驚きました」と振り返る。
 また、同サービスでは過去30日分のデータをCSV形式のファイルとして書き出せるため、校内の運用管理に活用できる魅力がある。検証期間では何度か基準値を超えたケースがあったが、各教員が換気を心がけていることもあり、音楽室を含めて教室内で超えたことはなかったという。
 こうした感染リスクを低減する取り組みについて宮崎校長は、たとえばオープンスペース型教室でも、パーティションを閉じるとCO2濃度が「換気注意」まであっという間に上がったことから、モニタリングできる効果を実感したと答える。「すなわち、CO2濃度を可視化して適切な換気に努めることが、子どもの健康を意識して学びを継続することに役立つ。とりわけ保護者の心配に対しては、具体的な安心材料を提供できるツールになると思いました」と強調した。

新年度から4台を導入し、子どもの健康管理に活用

 新年度には第一・第二音楽室、職員室、校長室に4台を導入し、運用を開始することが決定。校長室に設置されたセンサーは、体育館での行事の際や、視聴覚室、家庭科室など締め切って使用する際など、気になったときにいつでも持ち出せるようにしていく意向だ。
 その上で、ネットワークと接続すれば各設置場所のCO2値を一覧で確認できることから、「職員室のPCでモニタリングできるようにして先生方の意識を高め、コロナ禍における子どもの健康管理に活かしていきたいと考えています」と抱負を語る。同時に、「学校の中では音楽室が最も気になる場所になるのは確か。この取り組みが他の学校にも広がり、豊かな音楽活動を継続する力になってくれればいいですね」と期待した。

CO2計測による3密回避支援サービスの概要

 「CO2計測による3密回避支援サービス」は、職員室や各教室に設置した高精度CO2センサーが計測したデータをクラウドに送って一括管理を行うもの。
 空調管理だけでは難しい換気のタイミングを、学校長や管理者のタブレット端末などで常時確認ができる。また、計測データの提供で運営状況を後から確認することも可能。

特長

換気のタイミングをタイムリーに通知
 ・CO2濃度をPCやタブレット端末などに常時表示可能。
 ・万一基準値を超えるCO2が計測された場合は、モニター画面やスピーカー音で即時に異常を通知。

導入やメンテナンスが簡易
 ・クラウドサービスのため、インターネットに接続できる環境があり、手持ちのPCやタブレット端末を利用すれば、必要な機材はCO2センサーのみ。短期間でサービスの利用を開始できる。
 ・CO2センサーのネットワーク配線は不要で簡単に設置可能。

超高精度のCO2センサーを採用

 ・測定誤差±30ppmの高精度なCO2センサーを採用し、正確な換気タイミングを検知。
 ・温度・湿度も同時に計測して伝送。校内の熱中症予防などにも役立つ。
 ・ワイヤレス(Wi-Fi)接続なので広範囲の通信が可能。

各教室や校内のCO2濃度の遷移を見える化

 ・計測データを提供するサービスを用意。データを分析・解析することで、各教室や校内の環境・運営の改善に活かすことも可能。
 ・教室ごとに「数値に基づき適切に換気をしている」ことを学校のホームページやポスター等に掲載・掲示することで、教職員や児童・生徒、保護者らに安心感を与えられる。
 ・QRコードを通知することで、保護者がリアルタイムに教室の環境を確認することも可能。


室内環境の状態が表示される

問い合わせ先
 セイコーソリューションズ株式会社 戦略ビジネス第二本部
 Tel=03(6779)8950
 https://contact.seiko-sol.co.jp/co2-measurement/

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