小中学校の学びの質を高める1人1台端末の活用法 1人1台端末を活用する授業づくりの考え方
11面記事高橋 純 東京学芸大学教授
高等学校では今まさに端末整備の進行中だが、すでに端末整備が完了した小中学校でも活用法や使い方などを模索中である。その背景と今後の考え方の指針について、東京学芸大学の高橋純教授に聞いた。
(1) 「効果的なICT活用」という考え方の限界
これまでのICT活用は、電子黒板など教師が活用することが中心的であった。教師の指導技術の支援や向上が中心であり、ハウツーで伝達しやすく即効性もあった。だからこそ効果的なICT活用というフレーズで研修等が行われた。
一方、1人1台端末は、子どもが活用するICTである。従来の紙や鉛筆といった文房具の代わりにも活用できるし、学習者の行為や能力を拡張するためにも活用できる。特に後者のレベルになると、子どもの学び方が変わることになり、指導技術というより教育方法レベルでの変化が求められる。
教育方法が変われば授業の形が変わる。対象となる授業が変わるのであれば、何に対して効果的なのかという話になり、効果的なICT活用という考え方では限界があると気づかされる。
(2) 携帯電話の普及期を教訓にする
1995年頃、携帯電話は、必要か不要か、1人1台持つべきかといった議論があったと思う。子ども1人1台端末も、この頃と似た状況にあると思う。携帯電話の普及以前の待ち合わせは、事前に詳細な場所や時刻の連絡が必要であった。普及初期も、同じように詳細な連絡をしていた。この頃、携帯電話はなくても充分だと主張する人も多かった。
しかし、普及が進むと、おおよその待ち合わせ場所や時刻を決めて、到着後に連絡するといった活用法の変化が起こった。ここで初めて携帯電話が人々にとって欠かせない道具になったのである。
つまり、普及前後で操作法は同じではあるが、新しい道具に合わせた待ち合わせ方に変化して、本格的な効果を発揮したのである。このように考えれば、従来の単線型で進む授業は紙や鉛筆に最適化されており、端末を活用しなくても充分と思う先生がいても当然であろう。新しい道具に合わせた授業のカタチが求められている。
(3) クラウドの「非同期・分散+協働」の特長を生かす
新しい授業の形はまだまだ不明である。本質的な目標や、個々の教師の信念に基づいた創意工夫が求められている段階といえよう。
中教審答申では、「個別最適な学び」「協働的な学び」と同時に、より上位な概念といえる「一人一人の子どもを主語にする学校教育」と示されている。こうした目標に向かって試行錯誤を続けている授業がある。
「一人一人の子どもが主語になる」のであれば複線型の授業となり、個別も協働も子どもの選択で同居するような授業も一つの例になるだろう。クラウドの特長も生かされている。