教師のわざ 研究の最前線
14面記事生田 孝至・姫野 完治 編著
多様な授業の「みえ」を可視化
本書は、「教師のわざ」シリーズの第3弾。優れた授業をしている教師はたくさんいるが、そのような授業を実践する教師のわざは簡単には伝わっていかない。教師のわざを、教育工学的なアプローチで対象化し、そのわざに迫り、卓越したわざを学びたいと願っている人たちの力になりたいという思いから本シリーズは企画されてきた。教師志望の学生から若手教師向けの第1弾『未来を拓く教師のわざ』を受けて、研究の色合いを強めた第2弾『教師のわざを科学する』に続くものである。
3部構成で、第I部で研究の軌跡と最前線を概観した上で、第II部で教師のわざを解明するためのアプローチ、そして第III部で教師のわざを伝承するためのアプローチを取り上げている。とりわけ注目されるのは、360度カメラやウエアラブルカメラなどの機器を用いることにより、教師の「みえ」(児童・生徒の様子をどう捉えているか)を映し出し、多様な授業の「みえ」の共感・共有を教師の成長につなげようとしていることである。
現下のコロナ禍で教育環境は大きく変化、対面での対話的な関わりが制約され、オンラインでの授業が増えており、提供されるビデオ教材や映像は、「主体的・対話的で深い学び」に相反することも少なくない。それ故、人間である教師のわざや知恵を豊かにすることを追究することで、未来の教育を構想しようとする本研究は大変貴重である。
(2200円 一莖書房)
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