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画一化する授業からの自律 スタンダード化・ICT化を超えて

14面記事

書評

子安 潤 著
子どもの声に応える教育実践へ

 学校教育において、「何を教えるか」と「どのように教えるか」は、重要な二つの構成要素である。文科省が定める学習指導要領は、小・中・高校で教えるべき教育内容を定めている。その一方で、教育方法・技術は個々の教員の技量や特性に依存する部分が少なくない。そこに、名人芸と呼ばれるような教育実践が存在する余地もある。
 ところが、最新の学習指導要領に基づいて作成された教科書には、授業の進め方や教え方に関する記述が散見される。「何をどのように教えるか」が、事細かに示されているのである。こうした教科書を使った授業には、名人芸の入り込む余地は残されていない。どの教師も、同じ授業を同じ形式で展開していくようになる可能性が強いのである。
 本書は、このような学校教育の現実に危機感を持った著者が、画一化していく授業に対する警告を鳴らし、そこからの回復の方途を考察したものである。
 新型コロナウイルス感染拡大の下で急速に広まったオンライン授業や各種のICTも、便利さの半面で授業の画一化やスタンダード化を促進していく。アクティブ・ラーニングや探究学習でさえも、形式的な授業に陥り、画一化する危険性を持つと、著者は指摘する。
 子どもの声に応える教育実践の道は険しいが、未来の教育の希望はそこにしかない。
(2420円 学文社)
(都筑 学・中央大学名誉教授)

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