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避難所の「減災」対策として全小中学校にマンホールトイレを整備

14面記事

施設特集

益城町が導入した災害用マンホールトイレ

熊本県益城町

 過去の大規模災害時における避難所では、断水、停電によって水洗トイレが使用できなくなることで衛生・健康面に大きな支障を生じたことから、災害時に快適なトイレ環境を確保することは、命にかかわる重要な課題として認識されている。こうした中、熊本県益城町では指定避難所となる町内すべての小中学校(7校)と総合体育館に、下水道を利用した災害用マンホールトイレの整備を進めている。そこで、担当する下水道課の吉本秀一課長に話を聞いた。


吉本 秀一 課長

熊本地震の教訓を生かし、断水時も使えるトイレを
 2016年4月の熊本地震で二度の最大震度7の揺れに見舞われた益城町では、合計22キロに及ぶ下水道の管路が損傷し、多くの避難所で水洗トイレが使用できなくなる事態を招いた。しかし、隣接する熊本市では震災以前にマンホールトイレを整備していた学校が数カ所あり、そこでは「衛生的で、いつものトイレと同じように使えた」「仮設トイレと違って段差がなく、要配慮者にも利用しやすかった」など、災害時のトイレ確保に役立ったことが報告されている。
 こうした教訓をばねに、同町では2019年度より国土交通省の総合地震対策事業に取り組み、被災を想定して被害の最小化を図る「益城町下水道管路総合地震対策計画」を策定。下水道の耐震化等の取り組みと併せて、指定避難所の減災対策となる災害用マンホールトイレ整備を進めている。
 「昨年度中までに小学校4校への工事を終え、2023年度までに指定避難所となっている全校への整備を完了する予定です」と状況を語る。

直接下水道管に流せ、一定期間の貯留も可能
 採用した積水化学工業の「防災貯留型トイレシステム」は、災害によって水洗トイレが使えなくなった際にプール水などを用いて排泄物を直接下水道管に流せるため、衛生的で臭気も軽減されるのが特長だ。また、1日につき1回の注水と貯留弁操作による排出のみで済むため、運用も容易。しかも、下水道の本管が破損した場合も、仕切弁によって一定期間貯めておくことができる利点を持つ。
 なお、益城町ならではの工夫としては、「より確実に水源を確保できるよう、耐震性貯水槽も併せて整備しています」と吉本課長。
 実際に使用する場合は、下水道のマンホールのふたを外して便座を置き、上部にテントを設置することで仮設トイレとして使用できる仕組みだ。同システムは一式で5基を設置でき、500人の利用が可能。標準的な避難所の設置方法としては、一般用4基、車いす用1基として使用することが多いという。
 なお、益城町避難所運営マニュアルでは一般用トイレを男女比1:3での運用を想定している。

設置訓練を通して防災意識を高めてほしい
 ただし、いざというときにスムーズに活用するためには、日頃からの設置訓練が欠かせない。「たとえば運動会などのイベントで人が集まる際にトイレを組み立てて、実際に教職員や保護者、児童生徒に使用してもらうことが、防災意識を高める上でも重要になると考えています」と指摘。今後は、自主防災組織等への周知を含めて協力していくことを抱負として挙げた。

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