発達障害の子が保護者の悩みに回答 学校生活の相談多く
10面記事ウェブサービス「でこぼコ・ラボ」
発達障害の診断を受けるなど、発達の凸凹がある小・中学生が「先生」となり、子育てに悩む保護者の相談に回答するウェブサービス「でこぼコ・ラボ」(https://dekobocolab.com/)が今月、開設1周年を迎える。子どもたちが自分を客観的に見つめて言葉でまとめる機会を設けるとともに、保護者にわが子の特性への理解を深めてもらう目的がある。どのようなやりとりが行われているのか。
支援教室のトレーニングとして
保護者の悩みと「子ども先生」の回答例
<特定の女友達がいない娘のことを心配しています。本人は悩んでいる様子は見られず、逆に一人でいるのが好きなのかもしれません。親としては娘が孤独な人生を送るのではないかと、心配してしまいます。(娘・小学生低学年)>
学校生活でなかなか友達ができない娘を心配する保護者。「でこぼコ・ラボ」に悩みを投稿すると、小学生の「子ども先生」から回答が届いた。
<友達はいてもよいし、いなくてもよい。今の友達も中学・高校に行くにつれてばらばらになってしまう。そう思うと、今いてもいなくてもいいのでは。また新しい環境で、できたらできたでいいと思う。(小学生高学年)>
小学校を卒業した先輩の「子ども先生」からは、自分の体験を基にした助言も。
<休み時間などは一人で過ごしてもよいと思うけど、お話をできる友達はいた方がよいかも。経験上、一人だとつらい。学校では、班や2人組を作りなさいとよく言われるから。声を掛けるなら、大きなグループではなく小さな2~3人ぐらいのグループがいい。(中学生)>
このウェブサービスで回答しているのは、発達障害児向けの支援教室「よつばCOLORS」(奈良市)に通う児童・生徒。自閉スペクトラム症や学習障害など発達障害の診断を受けた子ども、発達障害の疑いがあるグレーゾーンの子ども、発達障害により不登校になった子どもなど、小学校2年生から中学生までの約60人が、言語聴覚士と共にトレーニングの一環として取り組んでいる。
もともと支援教室のスタッフだった綾美津子さんが、50人近くの子どもたちが教室に通えず待機している状況や保護者が子どもの気持ちが分からず悩んでいる姿を踏まえ、昨年4月に一般公開を始めた。
「物理的にとらわれないウェブサービスという形で、保護者の気持ちに寄り添えるシステムを開発できないか」と考えたという。綾さんが共同代表を務める合同会社アンラベル(大阪市)が運営している。
利用に当たっては、氏名やメールアドレスなどの情報に加え、子どもの特性を登録する。似た特性を持つ「子ども先生」を選ぶため、約40項目の質問に答える必要がある。
会員登録は無料。現在は約200人が登録している。月額500円で他の質問者と子どもたちとのやりとりを閲覧できるプランも用意する。
多く寄せられる悩みは、子どもの人間関係について。友達とうまく話せない、自分の意見が言えない、こだわりがあるために友達とトラブルを起こしてしまうなど、学校生活に関する相談も多いという。
不登校の子どもが勉強でうまくいかず、泣いたり落ち込んだりしているときの対応には、子どもたちから「自分で気持ちを整理しているので離れて見守ってほしい」との回答があった。後日、保護者が実践してみると、部屋に閉じこもっていた子どもが出てきて話ができたという事例もある。
綾さんは「専門家のアドバイスとはまた違った、正直な子どもたちの気持ちが回答から伝わってくる」と語る。
子どもたちは大人からの質問に答えることで、「誰かの役に立っている」実感が得られるという。一方、保護者にとっては、子どもの行動には何らかの理由や考えがあることを理解する助けになる。
「回答する子どもも相談を寄せる保護者も元気になっている。今後、学校の先生方向けのサービスも考えていければ」と綾さんは話している。