日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

公立学校の外国籍教員 教員の生(ライヴズ)、「法理」という壁

13面記事

書評

中島 智子・権 瞳・呉 永鎬・榎井 縁 著
全国の実態踏まえ任用の問題を提起

 日本国籍を有しない者に公立学校の教員採用選考試験の受験を認める一方、身分は「任用の期限を附さない常勤講師」と位置付けた平成3年の文部省(当時)通知。同年1月に日本・韓国の両外務大臣「覚書」署名により、韓国籍教員の任用の在り方に決着をつけた。
 通知以前に採用選考試験に国籍条項を設けていない教育委員会が採用した韓国籍の教員らは、教諭から常勤講師へと降格し、管理職、主任への道を閉ざされた。政府が従来、提示してきた「公権力の行使又は公の意思の形成への参画に携わる公務員となるためには日本国籍を必要とする」と解される「公務員に関する当然の法理」を根拠に、「教諭」については、校長が行う校務運営に参画することにより公の意思の形成への参画に携わる職務とし、「法理」の適用があるというのが、その理由である。
 本書は、この「公務員に関する当然の法理」に疑問を呈しつつ、「外国籍(ルーツ)教員のライフストーリー」から全国の外国籍教員の実態などを第1部で語り、戦後からの外国籍教員の「教諭」任用の変遷、外国人教員任用を進める大学の動向、諸外国の状況などを第2部で解説した。
 教育のグローバル化に対応し外国籍教員を求める採用選考試験での特別選考の出現もテーマアップするが、これまでの外国籍教員の位置付けとの整合性をどう取るのかなど、新たな時代に考えさせられる課題が多いことに気付かされる。
(2970円 明石書店)
(矢)

書評

連載