ネットいじめの現在(いま)子どもたちの磁場でなにが起きているのか
13面記事原 清治 編著
データ基に起きやすい環境を分析
「ぼっちを恐怖する感覚が今のいじめ問題の背景にある」という第IV部「いじめをめぐる論点」の一節に衝撃を受けた。ネット空間の中で起こっている「リアル」に迫ることを狙いとした本書は、大規模データを基にしている。
書名にある「磁場」とは、ネットいじめを誘発・抑制するような力を持った場で、学校や学級において均質に存在しているわけではない。一部の生徒たちがいじめ加害に引き付けられている学校の特性や文化としての「磁場」に、注意を向けていく必要があるという。
学力とネットいじめの関係や人間関係のつくり方の変化に焦点を当て実態分析を試みた第I部「子どもたちの現在を捉える」。中高生にとって友達とはLINEでつながっている子。今やスマートフォンは、友達の「内」と「外」を仕切る道具。仲間から浮いていないか気を配り、みんなのノリにかなっていることが「よい」の基準として生きる子どもたちの実態が見える。
義務教育段階ですらコミュニケーションツールを駆使して、仲間関係で失敗を起こさないようにメッセージのやりとりを行うことに力を注いでいる子どもたち。このような人間関係のありように対して、大人はどのように向き合っていけばよいのか。
インターネット上の誹謗中傷対策で「侮辱罪」の厳罰化に舵が切られた今こそ手にしたい一冊である。
(2420円 ミネルヴァ書房)
(伊藤 敏子・仙台市教育局学びの連携推進室専門員)