原子力発電環境整備機構(NUMO)が全国研修会開催
4面記事コーディネーターによる報告のまとめ(オンラインと会場を結ぶハイブリッド開催)
「高レベル放射性廃棄物の最終処分」をテーマに教科横断型の意欲的な研究発表~全国から12の実践報告~
「1つの正解のない問い」現代的な課題に挑む
原子力発電で使った燃料を再処理する過程で生み出される、高レベル放射性廃棄物の処分問題は、世代を超えた社会課題だ。
その関心を次世代へ伝える研究と実践を、教員と共に推進する原子力発電環境整備機構(NUMO、近藤駿介理事長)が3月6日、東京の日本科学未来館で2021年度の全国研修会を開催した。全国から12の実践発表があり、オンラインと会場を結ぶハイブリッド形式で活発に意見交換をおこなった。
冒頭に同機構の近藤駿介理事長が登壇し学習支援事業を紹介。地層処分に関する出前授業や、GIGAスクール構想に対応した動画の作成、高レベル放射性廃棄物問題をテーマにした『私たちの未来のための提言コンテスト』の開催などを通して、地層処分事業の理解促進を図る取り組みを挙げた。
さらに、2020年11月に北海道の寿都町と神恵内村で地層処分に向けた文献調査が始まり、現在「対話の場」が開催されていることや、フィンランドやカナダなどの諸外国の最終処分の事例など最新情報も提供。対話の場では「自分事として考える際の疑問や意見が出され、人々の関心の変化が感じられる」と述べた。
あいさつする近藤駿介理事長
続くセッションでは、4人のコーディネーターの進行のもと、エネルギー・環境教育の各研究団体が、小学校、中学校、高校における研究・実践報告を行った。理科や社会科、家庭科など他教科、教科横断型の意欲的な実践が報告された。
愛知教育大学附属名古屋中学校の奈良大教諭は、中学3年間をかけた放射線教育の実践を報告。鍵やクリップなどをエックス線撮影した歯科用のデンタルフィルムを事前に用意し、放射線の透過性を学ぶ2年次の授業が注目を集めた。
地層処分問題の単元化を水産高校での取り組みを通して研究しているのは弘前大学の長南幸安教授らのグループだ。水産科の教科書に登場する地下資源「メタンハイドレート」を素材に、エネルギー問題に着目させた。地下資源が安定的な地底や海底に埋蔵されている点に着目させたうえで、放射性廃棄物の最適な処分方法を検討させている。
小学校高学年を対象に地層処分を学ぶ実践も複数報告された。エネルギー自給率や放射性廃棄物の処分問題を、動画やNUMOの出前授業などを活用して知り、子ども自身が処分方法について話し合うなど、考える活動へと展開させていたのが特徴だ。
どの報告も「一つの正解のない問い」である高レベル放射性廃棄物の問題に児童・生徒が向き合うことで、新学習指導要領が示す資質・能力の育成を実現しようとする点で一致していた。
同機構の田川和幸専務理事はセッションのまとめ後の挨拶として「高レベル放射性廃棄物の処分問題について対話する経験は、児童・生徒の将来に役立つだけでなく、今の大人の対話活動にも参考になると感じた。研究・実践のすそ野を広げるため、次年度も取り組みを盛り上げていきたい」と述べた。
分科会では、各地の研究会による実践報告と意見交換会が行われた