専門職としての教師の資本 21世紀を革新する教師・学校・教育政策のグランドデザイン
14面記事アンディ・ハーグリーブス、マイケル・フラン 著
木村 優・篠原 岳司・秋田 喜代美 監訳
「協働の文化」による学校づくり提唱
本書では「教職という専門職にとって過去半世紀で経験したことがない、大いなる困難に直面している」「教職は過去30年以上にわたり衰退の一途をたどっている」と述べている。そして、困難な時代に置かれる教師の挑戦を支え、専門職としての教師の協働の文化を育むための革新的な提案を試みている。
論じているのは、全ての学校の全ての教師とリーダーによって成し遂げられる公教育全体の質の変化と、それを新しい戦略によっていかに保障するのかについて。その新しい戦略とは、教師たちにあるさまざまな「潜在能力」と「関わりの力」、すなわち「専門職の資本」の力をつなぐことであるとしている。
「専門職の資本」という概念は、教師の専門性を考えるに当たって「ビジネス資本」と対立するものとして提示している。公教育のシステムを教師の専門性の観点から人的資本、社会関係資本、意思決定資本という形で説明し、そのことで教師の専門性を中核に据えて学校という場を協働の文化から問い直す関係論的な立場から改めて考える視点を提示している。
本文中には北米や欧州のさまざまな事例も示しているが、それらも含めて、これからの日本の教育、世界の教育に求められることを理解し、実践していくために必要なことを学ぶことができ、子どもも教師も幸せになれる学校づくりに向けても重要な助言を得られるような一冊になっている。
(5500円 金子書房)
(秀)