デジタル時代の子育て 年齢に応じたスマホ・パソコンとのつきあい方
16面記事ミヒャエラ・グレックラー、村田 光範 監修
内村 真澄 翻訳
データ基に弊害避ける手だて説く
まず驚き、うなずいたのは「子どもは大抵、自分の欲しいものはわかっているが、自分に必要なものはわかっていない」という言葉だ。
世はまさにデジタル社会。全ての小・中学生にタブレット端末が手渡されることになり、インターネットを利用する子どものスマホ保有率は小学生で6割、中学生で9割を超すほどである(令和3年度内閣府調査)。この流れに遅れまいとする動きは今後当然高まっていくと思われるのだが、果たしてそれが喜ばしいことばかりか。
子どもの成長発達には「自然と人との直接的な触れ合いは欠かせない」のだが、デジタル社会は「子どもと自然、子どもと人を隔ててしまう」、それがデジタル社会の「落とし穴」なのだ、として警鐘を鳴らすのが本書である。ドイツで出版され、世界の注目を集め多くの言葉に訳され、17番目に日本語訳が出された。
・3歳までは電磁波を発する玩具や電子映像は与えない
・4~6歳期は現実の体験や運動を多くさせる
・7~9歳は電子メディアをできるだけ使わせない
・10~16歳は、メディアを正しく使いこなせるように導く重要期間
―なぜこのような配慮が必要か。それを怠ると、どんな弊害や障害を生むか。それらが詳細なデータと理論に基づいて熱く語られる。デジタル社会から子どもを守るのは大人の責任だと説く本書は、日本の教育関係者には必読、必携の一冊だ。影は光が生むという真理を忘れまい。
(2090円 イザラ書房)
(野口 芳宏・植草学園大学名誉教授)