教育現場と研究者のための著作権ガイド
16面記事上野 達弘 編
Q&Aや判例紹介で分かりやすく
授業や研究において、他者の創作した著作物の利用は、一般的に行われている営みである。それなしには、授業も研究も成り立たないといえる。
著作物には、本や論文だけでなく、映画、アニメや漫画、音楽など、多種多様なジャンルのものが含まれる。それらの著作物は、著作者たちの創造的で独創的な活動を通じて作り上げられた貴重な文化的産物であり、創作性に富んだものである。利用に際しては、著作者に対する敬意の念を持つと同時に、著作者が有している固有の権利である著作権を尊重することが何よりも重要である。
本書は、著作物利用の重要ポイントについて、教員、学生・生徒、学校、研究・論文の4カテゴリーに分けて整理している。111個のQ&Aの形式と詳細な解説から構成されており、法律になじみのない読者でも興味深く読み進められるように工夫されている。個々の判例の紹介も、大変興味深い。
さらに、本書では、四つのテーマに基づいて、学生・生徒への著作権教育の現状や基本的な視座などにも言及している。デジタル化が進み著作物の複製が容易になる中で、学校教育での著作権教育は欠かせないものであり、重要な問題提起であるといえる。
「著作権?」という学校関係者の疑問や不安の解消には、本書の一読を強く勧めたい。
(2420円 有斐閣)
(都筑 学・中央大学教授)