運動部地域移行、大会の在り方など議論 学校外団体参加、外部指導者引率可へ見直し要請
2面記事スポーツ庁
運動部活動の地域移行を議論しているスポーツ庁の検討会議は2月28日、大会の在り方や教員の負担軽減、活動にかかる費用などについて議論した。大会参加資格について、学校だけでなく、地域スポーツ団体からも出られるよう、国から中体連などの主催者に対し、参加資格を見直すよう要請するなどの意見が出た。
学校の規模縮小化で必要な人数が集まらず、十分な練習ができない状況もある。大会参加が学校のみに限定されると、地域スポーツ団体に所属する生徒の練習の成果を見せたり、同世代と切磋琢磨したりする機会がなくなってしまうとした。
トーナメント形式の大会が勝利至上主義を助長している可能性があるとの声も上がった。レギュラーメンバーの固定化が起こり、大会への参加が一部の生徒に限られてしまうことを懸念。多くの大会が上位を目指す仕組みになっており、スポーツを楽しみたい生徒の需要に合わないことも出てきてしまうと指摘した。
都道府県や市町村単位で、楽しむことを目的とした大会の開催を要請する必要があるとした。ただ、高い水準の技術や記録に挑戦する生徒への発表の場を確保することの重要性も確認した。
開催時期について、夏季開催への疑問の声が上がった。夏季であれば空調設備を整え、空調が無理なら夏の実施を避けるといった配慮を大会主催者に求める必要があるとした。
大会の引率については、部活動指導員がいても教員が同行する場合もあり、負担軽減になっていない実情があるという。中体連主催の大会では、外部指導者の引率が基本的に認められていないため、外部指導者の引率を認めるよう、規定の見直しを要請する。
教員に頼った大会運営の在り方については、審判や会場設営に関わる教員がいて、所属校の試合がない日でも従事していることがある。検討会議は「スタッフの確保は大会主催者の責任で行われるもので、教員本来の業務ではない」とし、大会開催に係る経費を用いて外部委託をしたり、アルバイトを雇用したりして補充すべきだとした。
一方で、競技団体で役員などの立場にある教員が、適切な報酬を受け取った上で望んで運営に関わる場合、兼職兼業の許可を得る必要があるともした。
同庁が政令指定都市や中核市、県庁所在地の中体連と、これら地域の一部の教員に行ったアンケートの結果を紹介。中体連組織の7割以上が教員抜きでの大会運営が「不可能」と答えた。また、7割超の教員が大会運営に関わったと回答。そのうち「自発的に関わった」という教員は3%で、9割以上が「主催団体や教員から依頼があったため」「大会役員のため」と答えた。
地域移行後の活動にかかる費用についても議論。現状を「一定の金額を部員から集めているが、教員が指導を担っているため指導料が生じず、比較的低額」と分析した。地域でスポーツ活動に参加する場合、所属団体に支払う費用が部費と比べて金額が上がることが想定されるという。
地域スポーツ団体等に会費を支払うことは、継続的・安定的にスポーツ活動をするために必要だとした。一方で、会費が保護者にとって大きな負担になると、活動の参加に消極的になってしまう恐れがあるともした。
同庁が令和2年に行った調査によると、約88%の総合型地域スポーツクラブが会費を徴収していた。その金額は、6割が500円以内だったが、千円を超えるところも4分の1以上あった。
この日の検討会議には、室伏広治スポーツ庁長官が出席。「運動部の地域移行後の大会の在り方は、とても重要な問題。部活でも地域団体でもスポーツを楽しむ子どもというのは同じだ。平成30年に大会参加の基準について見直しの提言をしたが、具体的な動きはなかった。令和5年の移行に向け、地域や保護者にも、きちんと理解を得る必要がある」と今後の議論への期待を示した。