「一緒にゲームしよう」など「懐柔」禁止、性犯罪撲滅を要望
1面記事NPOが野田・こども担当相に要望
後藤啓二弁護士(元警察官僚)が代表を務めるNPOが14日、野田聖子・こども政策担当相に「子ども性被害保護法」(仮称)の制定などを求める要望書を手渡した。こども家庭庁の発足に伴い、省庁間の壁を越えて、子どもを守るための法整備が進むとの期待を込めた。同法では、学校などに対し、子どもを性被害から守るための対策を講じるよう義務付け、性行為に導くための懐柔行為(グルーミング)の禁止などを挙げている。
後藤弁護士は警察庁に勤めていた頃、子ども、女性を守るための施策を進め、退官後は弁護士を務めるとともに、NPO法人の「シンクキッズ」の代表理事として、子どもへの虐待や性犯罪をなくすための活動に取り組んでいる。
今回の要望書は「子ども虐待・子どもへの性犯罪ゼロを目指す弁護士フォーラム」との連名でまとめた。野田氏の他、岸田文雄首相、末松信介文科相らに宛てて提出している。
要望事項のうち、子どもへの性犯罪については、性行為に応じるよう説得するため、性的行為をしている子ども・大人の写真・映像・漫画などを見せることを禁止することなどを求めた。海外では規制されているが、日本では全く規制されておらず、制定を求めた法律で禁止するべきだとした。
このような行為は「グルーミング」と呼ばれ、「一緒にゲームをしよう」などと子どもを手なずける行為を含むものとした。他に、威迫行為や、家庭内虐待に伴う切迫状況を利用した性的行為も禁じるべきだとしている。
教員については昨年、教員による児童・生徒への性暴力を防ぐ法律が制定されていることから、新法では、学校支援ボランティアや学習塾講師など、子どもと接することが多い教員以外の人からも子どもを守ることを掲げている。
学校などに義務付ける性犯罪防止策は、文科省など関係省庁が定める指針で具体化するとした。要望書では、
・死角となりやすい場所への防犯カメラ設置
・子どもを送迎する自動車へのドライブレコーダー装着
・事実解明は警察に委ねる
―などを挙げた。
新法の制定と並行し、刑法で「地位利用性交等罪」を設けることを提唱。教員をはじめ、子どもに対して指導的立場にある人が地位や影響力を利用した性行為を処罰するよう求めた。
要望書ではまた、児童虐待に関し、一部の児童相談所や市町村には情報共有に消極的な姿勢が見られるとして、こども家庭庁主導で、そうした姿勢を改めるべきだとした。
包括的な「子ども安全基本法」(仮称)の制定も求めた。政府に子どもの安全に関する計画を策定するよう求める。こども家庭庁の役割に触れ、子どもの安全を確保するため、児童相談所などの機関が十分な役割を果たしていない場合は、国民がこども家庭庁に通報できるとした。通報を受けたら、調査し、必要に応じて是正指導を行うとしている。
グルーミング
法務省は昨年9月、性犯罪対策について法制審議会に審議を求めた(諮問)。検討事項の一つが「グルーミング」についてで、諮問文では、「性交等または、わいせつな行為をする目的で若年者等を懐柔する行為」と表現している。