日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

学校施設の高機能化・ZEB化に2249億円 令和3年度補正予算が成立

19面記事

施設特集

地震で吊天井が落下した体育館

文科省

新しい学びに対応した教育環境の整備に
 昨年12月末、文科省の21年度(令和3年度)補正予算が要求案の通り成立した。まず、もっとも予算的に大きいのは2249億円を投じる学校施設等の整備だ。児童生徒学生等の安全・安心の確保、新しい学びに対応した教育環境の向上とイノベーション創出に向けた教育研究活動の支援を図るため、学校施設における老朽化対策、耐震対策、ZEB化等を推進する。
 内訳は、公立学校1312億円、私立学校82億円、国立大学・高専等646億円、認定こども園140億円などになる。公立学校施設の整備では、老朽化対策、非構造部材の耐震対策、避難所としての防災機能強化(バリアフリー化、空調・換気設備、トイレ改修等)、学校施設の脱炭素化(高断熱化、LED照明、高効率空調、太陽光発電等)、木材利用の促進(木造、内装木質化)を推進。子どもたちの安全・安心な教育環境を確保するとともに、公共施設全体で約4割を占める学校施設の脱炭素化をより一層強化することが目的だ。
 また、国立大学・高専等はこれらに加え、施設のZEB先導モデルを他大学や地域へ横展開し、全体のZEB化を推し進めていく。

私立学校施設の耐震化完了を加速
 私立学校施設の整備では、公立学校に比べて遅れている耐震化完了に向けた取り組みを加速化するとともに、地域の避難所として必要となる防災機能の強化、教室内の換気やトイレのドライ化など衛生環境の改善を推進する。
 防災機能強化の内容は、技術的に補強を行うことが困難な建物の建替え工事や、地震により落下・転倒の危険がある天井材、書架、内・外壁材、照明器具等の耐震対策工事、避難経路の確保や屋外防災設備の整備工事も含まれる。また、和式便器から洋式便器への改修工事、情報通信ネットワーク環境の整備にも活用できる。補助率は大学が2分の1、高校等が3分の1以内となる。

待機児童対策となる保育の受け皿の整備
 認定こども園には、預かり保育や分散保育に対応するための施設整備(部屋の使用目的を変えるための改築・改修、分散保育のための間仕切り等の設置)や、トイレ・給食調理場の乾式化など衛生環境の改善、分散保育に対応するための空き教室の空調整備など、幼稚園機能部分に係る費用の一部を補助する。また、幼・保を含む耐震化整備や非構造部材の耐震対策も支援する。
 そのほか、昨年の福島県沖地震等の災害により被害を受けた学校施設等の災害復旧を迅速に進めるための予算として、70億円を確保した。

学校の感染症対策における支援を拡充
 新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた学校の感染症対策には331億円を投資する。学校における感染症対策が長期化している中、第6波への万全の備えも見据え、各学校において感染および拡大リスクをできる限り低減させながら、教育活動を継続させることが目的だ。
 そのため、幼・小・中・高・特別支援学校等における消毒液・CO2モニター等の保健衛生用品の購入や消毒業務の委託、地域の実情に応じた感染症対策等の実施および特別支援学校スクールバスにおける感染リスクの低減を図る取り組みなどに必要な支援を行う。補助率は公立・私立とも2分の1となる。
 また、幼稚園の感染症対策として、保健衛生用品(消耗品・備品)の購入費を1園あたり30~50万円支援するほか、オンラインによる教員研修や保育参観、保育動画の配信やアプリを利用した家庭との連絡など、ポストコロナを見据えたICT環境整備に1園あたり100万円を支援する。
 加えて、ウィズコロナ下での障害者がスポーツに取り組める環境の整備として、体育・スポーツ施設の新改築、空調設備等の環境整備に24億円。大学入学共通テストにおける感染症対策にも1億円を確保し、無症状の濃厚接触者に対する別室受験対応など万全の感染症対策等を講じる。

ものづくりを支える基盤整備を強化
 そのほか、大学には研究の進展により多様なデータ創出が可能となる中、それを支える研究施設・設備が不十分ということから、研究DXプラットフォームの構築に91億円、教育研究基盤の強化等に98億円、研究成果の実用化を目指すスタートアップ支援等に50億円、私立大学等教育研究装置・設備の整備に10億円を投じる。
 大学・高校は今後の日本の成長の鍵を握る人材育成を図る場所だが、設備の老朽化が問題となっているほか、IoT時代に対応した装置・設備も進んでいない。したがって、研究やものづくりに用いる機能を一刻も早く強化する必要があるからだ。
 さらに、GIGAスクール構想の推進として84億円。教員への1人1台端末を整備するとともに、高機能なカメラやマイク、大型提示装置など遠隔授業環境の高度化を支援する。

施設特集

連載