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学校施設を創り変える 教育環境向上と老朽化対策の一体的整備を

15面記事

施設特集

 学校施設の老朽化がピークを迎える中で、全国の自治体にはこれからの時代を担う子どもの育成にふさわしい、豊かで創造的な学びの場に造り替えていくビジョンが必要になっている。ここでは、そんな新しい時代の学校施設のあり方や最新の設備機器について紹介する。

学校施設の価値をとらえ直す
 現在、学校施設は新時代の学びに対応した教育環境向上と老朽化対策の一体的整備を進めることが求められている。公立学校の7割以上が老朽化している中では、これまでのように一律に校舎を建て替えるわけにはいかない。自治体の財政負担が大きすぎるからだ。
 また、校舎自体も大きな箱だけ用意すればよかったものから、各教室に空調・換気設備や高速ネットワーク回線を始めとするさまざまなインフラを整備していくことが必要になっている。同時に、これらは定期的にメンテナンス&新規設備へと更新していくことが不可欠となるため、中長期的な改修計画を立ててトータルコストを縮減しつつ、長寿命化を図っていかなければならない。
 加えて、Society5・0時代やポストコロナ社会を見据える中では、学校施設という実空間の価値をとらえ直すことが重視されており、文科省の「学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議」の中間報告でも、「令和の日本型学校教育」の構築に向けた改革の方向性に準じた、多様な学習活動に柔軟に対応できる整備を実現するための財政支援制度の見直し・充実を図ることが提言されているところだ。
 すなわち、これからの教育はICTの活用などにより、学級単位で一つの空間で一斉に黒板を向いて授業を受けるスタイルだけでなく、学びのスタイルが多様に変容していく可能性が高いことから、そうした教育の実現に沿った施設づくりのプラン・改修計画が求められている。

改修時における脱炭素化の推進
 さらに、公共施設である学校には国が掲げる「2050年カーボンニュートラル達成」に向けて、改修時においては脱炭素化を進めることが使命となっている。
 したがって、消費電力を抑える高効率空調・LED照明機器、エネルギー負荷を低減する建材や断熱材、自然光や通風を利用した換気システム、屋上緑化や雨水利用、地域木材活用などによって、年間で消費する建築物のエネルギー量を大幅に削減すること。併せて、太陽光発電など自然の力でエネルギーを創り出すことで、エネルギー収支「ゼロ」を目指した建物を目指すことが期待されている。
 こうした学校施設のZEB化(ゼロ・エネルギー・ビル)の促進は、文科省における来年度の概算要求でも重視されており、具体的な支援策として環境や地域との共生につながる木材利用や省エネ設備導入に伴う建築費の単価アップ(国庫補助単価の見直し)を打ち出している。

新しい学びに対応した学習空間づくりを
 もう一つ、老朽化改修では新しい時代の学びに対応した創造的空間に転換することがポイントになる。これからの教育にはGIGAスクール構想で整備された1人1台端末環境のもと、個別最適な学びと協働的な学びを充実させることによって、すべての子どもの可能性を引き出すことが求められている。
 その中で、学校施設も教室だけでなく、廊下や階段、体育館、校庭などあらゆる空間を学びの場としてとらえ直すことが重要になっているからだ。
 すなわち、学校施設を改修する上では、子どもが自主的・協働的に学べる場を想定し、画一的・固定的な姿から脱した学習空間を創造していかなければならない。代表的な例を挙げれば、1人1台端末環境等に対応したゆとりのある教室の整備や多目的スペースの活用といったことになるが、そのための改修には次のような工夫が考えられる。

 (1) 余裕教室活用型(3教室分を2学級分の学習空間として利用)
 (2) 改修+一部増築型(改修と合わせた一部増築により不足するスペースを確保)
 (3) 家具配置工夫型(家具配置の工夫による学習空間を確保、教室と連続した空間の活用)
 (4) 特別教室コンバージョン型(教科に捉われない創造的な学びの空間に転換)

 ―などだ。
 さらに、創造的な空間づくりという意味では、読書・学習・情報のセンターとなる学校図書館の整備(ラーニングコモンズ)、教職員の教材製作空間(スタジオ)、コミュニケーション・リフレッシュの場(ラウンジ)の整備といった具体的なアプローチも提案されている。

少子化で他公共施設との複合化・共用化も
 一方、少子化によってわが国の18歳人口は今後20年間でピーク時の200万人から半減することが予想されており、すでに教育的機能の維持が困難となっている地域や学校も存在している。また、今後さらに統廃合が進み、学校がなくなることでの地域コミュニティーの衰退も懸念されている。したがって、市町村においては地域コミュニティーの核としての学校の役割を重視しつつ、小規模校でも活力ある学校づくりを実現できるよう、他公共施設との複合化・共用化も促進されているところだ。
 こうしたねらいには、地域の人たちと連携・協働できる空間を創出することで、集団の中で切磋琢磨しながら学習する、社会性を高めるといった学校の特質を補填できるという考えがある。文科省も、中山間地域等におけるコミュニティの維持を目的とした小規模校の存続に対し、教育上のデメリットを解消する人的・物的支援を拡充している。たとえば、GIGAスクール構想が目指す学びのDX=高速大容量ネットワーク構築による教育の高度化もその一つだ。
 遠隔授業を活用すれば、中山間地域の学校でも他地域や海外の学校と交流できるし、大学や企業と連携した学習も可能になる。しかも、臨時休校時のオンライン授業はもちろん、不登校児童生徒や病気療養児へのきめ細かな学習指導にも対応できるなど、人口が集中する地域の学校と遜色のない授業が担保できるからだ。

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