川口市いじめ訴訟「調査義務怠った」慰謝料支払い命令
2面記事さいたま地裁
埼玉県川口市立の中学校で、いじめ・人権侵害行為を受けていた生徒が不登校になったのにもかかわらず、学校側は、いじめ防止対策推進法が定める重大事態と位置付けて調査しなかったなどとしてさいたま地裁は15日、川口市に対し、慰謝料などの支払いを命じる判決を出した。
この裁判は平成27年4月に入学した元生徒が部活動に入り、他の部員からいじめ・人権侵害行為を受けたのにもかかわらず、学校側が適切に対応しなかったとして、元生徒本人が原告となり、市を相手に提訴した。
原告は入部当初からSNSグループから外されたり、翌年3月には練習中に部員からシャツをつかまれて引き倒されたりした。
原告が1年生だった頃の欠席日数は3日間だけだったが、2年生になってからは連続して欠席する日が増え、年間30日以上に達した。いじめを原因とした不登校となり、原告側は、重大事態発生時の調査義務を怠ったなどと訴えた。
判決によると、当時、不登校になった生徒の母からの訴えに対し、学校側は、個別に部員から事情を聞くにとどめ、調査票を使うなどした網羅的な調査を怠った。判決は原告側の主張を部分的に認めるもので、請求していた慰謝料などの額は550万円だが、同地裁が認めた額は55万円にとどまった。
原告は2年生だった頃の3月、学級担任の教員が目を離さないことを約束したにもかかわらず、4月に入って登校すると、同じ部活動の部員から指をさされて笑われるなどし、約束は果たされなかったと主張。これに対し、判決では「一時も離れず付き添うことを約したとは認められない」とし、原告と加害者の接点が少なくなるよう学級を編制し、教室の配置を工夫するなどの対応を含めて学校側の対応に違法性はなかったとした。
原告の母である森田志歩さんは15日に会見し、「川口市はまず息子に謝ってほしい」などと話した。