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多職種連携を支える「発達障害」理解 ASD・ADHDの今を知る旅

12面記事

書評

土居 裕和・金井 智恵子 編著
複数分野の基礎・最新知見を紹介

 戦後教育の中で最大の功績は「福祉教育」とりわけ「障害者福祉」に関する国民の意識を健全な方向に変えたことだ、というのが評者の考えである。戦前のある時期はわが子の障害を世間に知られまい、見せまいとして座敷牢に入れる事例もあったことを思うと隔世の感ひとしおである。
 本書を読んで障害のある人もない人も共に幸せになれる時代が到来したように思えてうれしくなった。こんなにも多くの専門家の力を結集して障害者の人生を豊かにすべく努力している時代になったかと実感できたからだ。
 時代とともに障害福祉の専門分野が細分化され、研究が深まることは大切だが、最終的にはそれらの専門性の協力、連携が重要になる。専門分野の協力、連携の実を生むためには、解決すべき課題や対象に対する深く確かな理解が不可欠である。そのための先端情報の提供が本書の役割なのだ。
 本書は、障害者福祉に関する多くの職種の専門家が連携し、協力して福祉の質を上げるために、「ASD・ADHDの今を知る旅」というサブタイトルを付して世に問う「発達障害理解の先端的なガイドブック」である。「保育・教育・医療現場における発達障害支援の実際から、脳科学・医工学的アプローチによる発達障害支援まで、さまざまな分野の基礎・最新知見を一冊で学べる点が本書の最大の特徴」という編者の弁に深くうなずき敬服した。
(2640円 北大路書房)
(野口 芳宏・植草学園大学名誉教授)

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