こども基本法の制定求める 子ども政策で有識者会議が報告書
3面記事子どもに関わる政策を包括的に議論してきた政府の有識者会議は、子ども・子育て当事者の視点に立った政策の重視や「こども基本法(仮称)」の制定などを求める報告書をまとめた。11月29日、清家篤座長(元慶應義塾塾長)が岸田文雄首相に報告書を手渡した。政府は今回の報告書と「こども庁」の創設に関する内容を一本化した基本方針をつくり、年内に閣議決定する。
若者の意見を反映
報告書は「これまでのこども政策は行政、学校や児童福祉施設など、大人の視点、制度や事業を運営する者の視点中心に行われていた面は否めない」と反省点を指摘。政策決定過程に子どもや若者の意見を反映させることや、子どもが抱える課題に制度や組織の縦割りの壁・年齢の壁を克服した切れ目ない支援を行うことを子ども政策の基本理念に掲げた。また、必要な子どもや家庭に支援が確実に届くよう、訪問支援やSOSの出し方を伝えることに力を入れるよう求めた。
こうした基本理念の下、今後取り組むべき施策として
(1) 結婚・子育て支援
(2) 教育環境の整備
(3) 困難を抱える子どもや若者の支援
―を3本柱に据えた。具体策には、子育てや教育に必要な経済的負担の軽減や家庭教育支援、子どもの安全を確保するための環境整備などを挙げている。
このうち学校教育に関連して、教員数の確保など指導体制の充実、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど専門人材の配置を求めた。
子どもの安全確保では、保育や教育に関わる仕事に就く人に性犯罪歴がないかどうかを確認する「日本版DBS」の早期導入に向けた検討も加えた。DBSは「無犯罪証明書」の提出を義務付ける英国の制度。有識者会議のヒアリングでも導入を求める声があった。
三つ目の柱である困難な環境にある子どもや若者への支援についても具体策を手厚く盛り込んだ。
子どもの貧困対策として授業料の減免措置や給付型奨学金で経済的負担を軽減する。家族の介護や世話を日常的にしている「ヤングケアラー」への支援では、子ども本人に自覚がない場合もあるとして、支援が必要な子どもや家庭の元に出向く「アウトリーチ」による早期発見を訴えた。
こうした政策を進める上で必要な基盤にも触れている。その一つに挙げたのが人権・権利の保障で、「こども基本法(仮称)」を制定し、子どもの意見を政策形成に反映させることを求めた。例として審議会や懇談会の委員に若者を選んだり、SNSで意見を聴取したりする仕組みを提案した。
基盤の一つとして個々の子どもの家庭の状況や教育・福祉の情報を横断的に把握できるデータベースの構築も挙げている。子どもや家庭からのSOSを待つことなく、能動的に支援を届けることが求められるとした。
有識者会議は9月から計5回会合を開き、これまで教育や福祉、経済などの分野の当事者や研究者・関係者らから意見を聞いてきた。政府は、年内に基本方針をまとめ、来年の通常国会に「こども庁」の関連法案を提出する予定だ。