キャリア形成を醸成できる施設設備に 文科省「高等学校施設整備指針」を改訂
13面記事文科省は5月、新時代に対応した高等学校改革や学習指導要領の改訂、社会状況の変化等を踏まえ、調査研究協力者会議がまとめた「これからの高等学校施設の在り方について」の報告書をもとに「高等学校施設整備指針」を改訂した。
生徒の主体的な学習活動を支援する施設整備を
産業構造や社会システムが急激に変化する時代に向けては、生徒自らキャリア形成を築き、人生を切り拓いていく資質能力を育むことが求められており、本指針はそのために必要な施設設備について示したものになる。
特色・魅力ある学校施設づくりを推進するための施設整備としては、スクール・ミッションやスクール・ポリシーに基づき、教育改革や再編整備を踏まえた施設計画が重要としている。生徒の主体的な学習活動を支援する施設整備としては、自主的な学習等のために、図書室や学習センター、自習室等の機能を充実するとともに、発表・討論するための場を計画すること。
多様な学習内容や学習形態に対応できる施設としては、幅広いコースや選択学習に対応するため、課題学習や補充的な学習、発展的な学習等が円滑に行える空間を計画することや、教科等横断的な学習に対応する教室の位置関係や動線を考慮することが重要としている。
職業教育校への最先端設備の強化、通信制へのサテライト施設の充実も
また、職業教育校については、Society5・0時代の地域産業界を牽引する職業人材を育成するため、最先端の産業教育施設・設備を計画的に整備することが挙げられている。適切な進路相談や履修指導等のための施設としては、生徒が主体的に進路を選択してキャリアを形成していくために、カウンセリングやガイダンス機能を充実させるために必要な空間を計画すること。
また、高等学校の生徒数は減少傾向にあるが、通信制の生徒数は増加していることから、サテライト施設の教育水準の確保も例に挙げられている。特別支援教育の推進のための施設としては、スロープや手すり、トイレ等のバリアフリー対応はもとより、障害のある生徒と障害のない生徒が、円滑に交流及び共同学習を行うことができる施設に計画することが重要としている。
新しい生活様式を踏まえ校内の快適性を確保する
一方、情報化や国際化に対応できる施設整備としては、教科「情報」だけではなく、他教科や日常的な学習活動を支援するために、図書室や特別教室、共通空間にも情報機器や情報ネットワークを計画すること。外国語の指導や生徒の受け入れと日本語指導等の学習活動への対応を考慮した計画にすることが重要としている。
生活の場としての施設としては、 新しい生活様式を踏まえ、普通教室そのものを一斉及び少人数学習にも対応できる空間にする。校内の快適性を確保するため、日照、採光、換気、室温等の影響に十分配慮しつつ、各種設備機器等も組み合わせて整備すること。地震、津波等の災害に対する安全性の確保では、生徒等の人命を守るとともに、被災後の教育活動の早期再開を可能とするため、施設や設備、囲障等の工作物の損傷を最小限にとどめる十分な耐震性能を持たせることが重要としている。
脱炭素化に向けた建物性能の向上も
さらに、地域の人材育成や生涯学習の場としての複合化・共用化においては、生徒の学習と生活に支障のないことはもちろん、施設間の相互利用・共同利用等による学習・生活環境の高機能化及び多機能化に寄与する計画とすること。脱炭素社会の実現を目指した取り組みが求められている中では、断熱化や日射遮蔽の建物性能の向上を図るとともに、照明や冷暖房等の設備機器の高効率化を図ることや再生エネルギーの導入も示している。