「論理的思考」の社会的構築 フランスの思考表現スタイルと言葉の教育
18面記事渡邉 雅子 著
言語圏により異なる捉え方、指導法
本書でも述べているように、「論理的思考力」は、世界中で、入学試験、資格試験、就職試験等、人生を決定付ける分岐点となる場面で重要視されている。日本でも、全国学力・学習状況調査において、論理的に思考・判断し、表現する能力に課題があることが毎回指摘され続けており、今次の学習指導要領改訂においても論理的思考力の重視が明確に表れている。「論理」の使用は、中学校で、6教科23回、高校では、34科目113回と急増している。しかし、教師たちに話を聞いてみると、その評価規準は曖昧で、記述式テストに懐疑的である教師が多い。
著者は、論理的思考は思考表現スタイルを通して表現されることに注目し、言語圏によって思考表現スタイルが大きく異なり、それ故、論理的思考の捉え方も異なることを明らかにしていく。英語圏のアメリカ、ロマンス語圏のフランスを比較対象としている。特にフランスの「ディセルタシオン」(小論文)の歴史的背景と学校教育での指導法等を丁寧に分析しており、各学校段階における歴史教育と哲学教育の系譜が実に新鮮で、刺激的である。
学校関係者は、ぜひ本書を読み、論理的思考力を的確に定義し、適切な評価規準を定め、記述式の呪縛から解放されてほしいと願う。
(4620円 岩波書店)
(新藤 久典・文部科学省学校業務改善アドバイザー)