中学生の「ヤングケアラー」認知度 7割超「聞いたことない」
2面記事さいたま市調べ
さいたま市内の中学生のうち、4・5%は家族の世話を行っている一方、「ヤングケアラー」という言葉を7割以上が聞いたことがないと答えたことが同市の調査で分かった。ヤングケアラーの実態を把握しようと、GIGAスクール構想で整備した情報端末を主に使って調べた。世話をしている生徒の7・5%は睡眠不足を訴えた。
市立中等教育学校、高校の生徒も対象とした。悉皆方式とし、計3万4606人を対象に、6月17~30日に実施。情報端末を活用し、インターネット上で回答した。中学生・中等教育学校生から2万8242件(有効回答率89・0%)、高校生から2037件(同71・1%)の回答を得た。
中学生・中等教育学校生の4・5%(1273人)が「世話をしている家族がいる」と答えた。同時に、ヤングケアラーの自覚の有無を尋ねた。「当てはまる」と回答したのは、2・3%。2項目間で数値に差があった。
同県教委の担当者は、その理由を「各生徒で『お手伝い』なのか『ケア』なのか認識に差があったのではないか」と考察した。
「いる」と回答した1273人を対象に悩み事や必要な支援などを尋ねた(いずれも複数回答可)。
世話のために、やりたいけどできていないことを聞いた。最も多かったのは「特にない」の65・4%。続いて「自分の時間が取れない」(10・8%)、「睡眠が十分に取れない」(7・5%)となった。
世話の大変さを尋ねると、70・5%が「特に感じていない」と答えた。「時間的余裕がない」と答えたのは10・6%、「精神的にきつい」と答えたのは6・1%だった。
学校や大人からの必要な支援は、「特にない」(55・1%)、「分からない」(13・6%)という回答が多かった。具体的な支援の内容としては「自分のいまの状況について話を聞いてほしい」(7・2%)、「学校の勉強や受験勉強など学習のサポート」(6・5%)という意見が多く見られた。
ヤングケアラーの認知度も調査した。71・7%の2万258人が「聞いたことない」と回答。「聞いたことはあるが、よく知らない」という回答も15・8%に及んだ。「聞いたことがあり内容を知っている」と答えたのは12・4%。8人に1人程度の認知度だった。
ヤングケアラーという言葉を知った経緯を尋ねた。テレビや新聞、ラジオで知ったという回答が53・0%。学校で知ったという生徒も26・3%いた。
高校生2割超正しく理解
市立高校生にも同様の調査を実施した。
世話をしている家族のいる高校生は0・69%。ヤングケアラーの自覚については0・98%の20人だった。
認知度を尋ねたところ、正しく理解しているのは23・1%。中学校よりも割合が高かった。
ヤングケアラーを知った経緯は、中学校と似たような結果になった。テレビや新聞、ラジオが52・9%。一方で、学校で知ったという割合は36・1%で、中学校より約10ポイント高かった。
自由記述式の回答では、「自分から声を上げる子がたくさんいると思うので、このようなアンケートを多く実施することが大切だと思う」「ヤングケアラーという言葉すら知らなかった」などの声があった。また、ヤングケアラーについて生徒に周知するために、校内にポスターを張ったり、ヤングケアラー体験者による講演の場を設けたりすることを提唱する意見が上がった。
前述の担当者は、「今回の調査がヤングケアラー支援の第一歩。子どもたちだけでなく、教職員にもこういった子どもたちがいることを周知する。専門機関との連携を図るなど、相談体制を整えていきたい」と話した。