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アフター・コロナの学校の条件

14面記事

書評

中村 文夫 著
分権、自治に支えられた学校、教育へ

 コロナ禍以前から構想していたという「わたしたちの学校」。新型コロナウイルスの出現により学校生活や日常が脅かされ、著者の考える「社会のつながりを深め、それぞれの人生を穏やかに暮らすための、基礎を養う」「義務教育」そのものが揺らいで「わたしたちの学校」像が鮮明になったのだろう。
 各章ではコロナ禍などで露呈した弱点、課題に焦点を当てる。冒頭に「問題提起」を置き、その歴史、今後の在り方などを示す。
 例えば、第一章「学校を防災の拠点に」では新たな感染症への対応や、これまで課題とされてきた人権に配慮した安全で安心な防災拠点をどうつくるかを提案する。同様に、1人1台のパソコン配備による教育の危うさ、地域の人々の目が届く「開かれた学校」や「小さな足」でも通える身近な学校が失われる現状、学校給食費の無償化の必要性や私費会計の危険性などを取り上げる。最終章の第五章「完全無償の公教育を」では補助教材費や修学旅行費など「広義の授業料」の無償化の必要性を、実例を交えて提案。最後に、これからの学校や教育に必要な条件を「八つの提言」に集約した。
 分権、自治に支えられ誰もが通える身近な「わたしたちの学校」で、大綱化した学習指導要領の下で営む「わたしたちの教育」の、その先に「わたしたちの生活」がある。
 本書自体が、そんな社会の在り方を求めた問題提起の書である。
(2750円 岩波書店)
(矢)

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