メタ認知とは?事例から見る子どものメタ認知を育む方法
トレンド文部科学省の学習指導要領には、未来を生きる子どもたちに必要な資質・能力として“メタ認知”に関する力の育成が掲げられています。
子どもたちを指導するうえで、「実はメタ認知の意味を理解できていない」という方もいるのではないでしょうか。今回は、メタ認知の意味と育成方法を事例とともに紹介します。
メタ認知とは
メタ認知とは、自分を客観的に認知する能力です。メタには“高次の”という意味があり、より高い視点から自分や物事を認知することをメタ認知といいます。
メタ認知は外部からの言葉を受け入れることによって形成されます。そのため、学校教育においては教員から生徒への声掛けやアドバイスが積み重なることにより、生徒のメタ認知が内面化することがあります。
メタ認知が高い人の特徴
メタ認知が高い人には以下のような特徴があります。
・自らの学習をコントロールできる
・他社とコミュニケーションをとることに長けている
・仕事の目標を定めて推進することに長けている
また、メタ認知を身につけることで自分の認知活動を振り返ったり、調整したりして自分にとって効果的な学習を自ら演出できます。
反対に、メタ認知が低い人には以下のような特徴があります。
・自分のできることとできないことが判断できない
・うっかりミスを起こしやすい
・他者から見た自分を考えられない
メタ認知を育むことで、子どもたちの効率的な学習につなげることが可能です。
学習指導要領とメタ認知の育成
学習指導要領は、全国の学校で一定の水準を保てるように文部科学省が定めた教育課程を指します。
文部科学省は、2030年の社会と子どもたちの未来を見据え、2017~2019年にかけて学習指導要領を改訂しました。新学習指導要領は小学校では2020年度から、中学校では2021年度から、高等学校では2022年度から年次進行で実施される予定です。
学習指導要領では、児童・生徒が知・徳・体のバランスのとれた生きる力、さらに以下の資質・能力の3つの柱をバランスよく育成することに留意するよう示されています。
・知識及び技能が習得されるようにすること
・思考力、判断力、表現力等を育成すること
・学びに向かう力、人間性等を涵養すること
このうち、学びに向かう力・人間性等では、これからの時代を生きぬく個人に必要な資質・能力として、自己の感情や行動を統制したり、自分の思考や行動を客観的に把握し認識したりするメタ認知に関わる力が重視されています。
出典:文部科学省『学習指導要領の趣旨の実現に向けた個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に関する参考資料』
メタ認知の育成を目指した授業の事例
全国には、生徒のメタ認知を育成する取り組みを実施している学校もあります。国立大学法人奈良教育大学附属中学校もその一校です。この学校では、以下3つの取り組みを通してメタ認知の育成を試みています。
・“6個の学び”の共有
・リフレクションシートの活用
・板書発表・口頭発表の実施
国立大学法人奈良教育大学附属中学校の3つの取り組み
ここからは、国立大学法人奈良教育大学附属中学校が行う3つの取り組みを詳しく紹介します。
・“6個の学び”の共有
1年間のうち、はじめの授業で教員が大切と考える以下6つの項目を生徒に伝えます。
1.練習の場と実践の場が結ばれた達成感のある「開かれた学び」
2.価値ある課題の継続的な探究に支えられた「深みのある学び」
3.主体的な学びと評価活動に支えられた「成長の自覚のある学び」
4.「わかる楽しさ」と「できる嬉しさ」「使う面白さ」のある学び
5.一人ひとりの学習者の願いや興味・関心の「生かされた学び」
6.協働的な学び合いによる「相互啓発のある学び」
単に授業を進めるのではなく、授業を通して考えてほしいことや感じ取ってほしいことなど、教員の思いを生徒に示すことで、生徒の意欲向上を狙うことが目的です。
出典元:内閣府男女共同参画局『男女共同参画の視点を取り込んだ理数系教科の授業づくり~中学校を中心として~』
・リフレクションシートの活用
リフレクションシートに「次にしたいこと」「新たに生まれた問い」などの項目を記載してもらいます。
生徒が自分自身の学びについて振り返り、考えて行動に移すという行動を習慣づけることでメタ認知を育みます。
板書発表・口頭発表の実施
板書発表と口頭発表の生徒に分けます。板書発表の生徒が途中式や自分の考え方を板書したのち、口頭発表の生徒が板書の内容を読み解いて発表を行う方法です。
この取り組みでは、「起承転結で簡潔に説明すること」「多すぎず少なすぎない量を板書すること」を大切にしています。
・取り組みの成果
国立大学法人奈良教育大学附属中学校では、3つの取り組みを通して生徒が各取り組みの必要性を理解するとともに、積極的に授業に参加してくれるようになったとの成果を報告しています。
また、リフレクションシートに自らの次の行動を明確に記す生徒ほど成績が上位であるとの傾向も見られました。生徒のメタ認知が働くことで、生徒自身の学習を支えているといえます。
学校教育で目指す“メタ認知”の育成
文部科学省は、メタ認知は社会や世界と関わりながらよりよい人生を送るために必要な能力であると示しています。身につけることで、より効果的な学習方法を自分で演出できるようになるほか、将来の仕事に生かすことも可能です。
メタ認知は外部からの言葉に影響されて形成されることもあります。そのため、学校教育においては、生徒への声掛けや指導方法、授業での取り組みに工夫しながら育成を促すことが求められます。今回紹介した事例を参考にしながら、授業への取り組み方を見直してみてはいかがでしょうか。